バイクのチェーンのたるみは何mmが正解?車種で違う規定値の調べ方と注油の手順

バイクのチェーンのたるみは何mmが正解?車種で違う規定値の調べ方と注油の手順

チェーンのたるみに、すべてのバイク共通の正解は無い。ホンダが公開しているスーパーカブ系のQ&Aを見ると、同じカブの系統でも規定の範囲は3通りに分かれている。だから最初にやることは、ネットで数字を探すことではなく、自分の車両の取扱説明書を開くことだ。

もうひとつ、先に書いておきたいことがある。ヤマハは車両の整備を販売店へ、国土交通省は異変を感じたら整備工場に相談を、日本二輪車普及安全協会は異状が見つかったら整備工場へ、と案内している。だからこの記事では、たるみを自分で張り直す手順は扱わない。規定値の調べ方、たるみを見る場所、点検の間隔、シールとノンシールの違い、注油で公式が禁じていることまでを、メーカー公式・国土交通省・日本二輪車普及安全協会の記載を根拠に並べた。

目次

同じカブの系統でも、規定の範囲は3通りに分かれている

まず、いちばん効く事実から。ホンダの【スーパーカブ(原付二種)】ドライブチェーンの緩み(たるみ)の規定の範囲を教えて|Honda公式サイトには、車名ごとの規定範囲が並んでいる。

たとえば、110に指定されているのは20-30mm。ところが、同じカブを名乗るC125では25-35mmになり、さらに110プロでは35-45mmまで動く。プロ仕様にいたっては、110の上限より下限のほうが大きい。

名前まで近い3台で、これだけ違う。つまり、バイクのチェーンのたるみはだいたい何mm、という覚え方をした数字を自分の車両に当てはめる書き方が、そもそも成り立たない。なお同ページは、チェーンの緩みが日常点検の項目であることも添えている。

ヤマハ発動機も、数字の出どころは手元の1冊だという立場だ。メンテナンス|ヤマハ発動機は、たるみ量は車種ごとに適正値が異なるとしたうえで、「各車種の取扱説明書を参考に」と案内している。

紙の取扱説明書が見当たらないときは、メーカーのサイトで型式ごとのものを探す手もある。見つからないからと平均値で済ませるより、そちらを探すほうが結局は早い。

たるみは、どこを押して測るのか。そして、張り直すのは誰か

規定値が分かっても、測る場所がずれていれば意味がない。前出のヤマハのメンテナンスページは、測り方をこう書いている。スイングアームの下部分を指で押して調べる、である。

同ページは、その前段で見るべき2つも挙げている。チェーンが伸びて、プレートとピンのつなぎ目にガタが出ていないか。余分なたるみが出ていないか。この2つを点検します、という書き方だ。どちらも「こうなっている」という断定ではなく、確かめる項目として並んでいる。

では、規定値を超えていたらどうするか。同ページは、スイングアームのアジャスターを使って張り直す、と書いている。ただし、同じページの冒頭にはこうある。純正部品の交換と「車両の整備はヤマハ販売店にご依頼ください」。張り直しは、読者が自分で手を付ける前提では案内されていない。

この線引きは、ヤマハ1社の話ではない。日本二輪車普及安全協会のバイク(二輪車)の日常点検・定期点検について|日本二輪車普及安全協会にも、同じ趣旨の注意書きがある。整備が適切でないと思わぬ事故につながるので、バイクに異状が見つかったら「必ず整備工場で点検整備を受けてください」というものだ。自分で点検も整備もできない場合は、バイク販売店を頼ろう、とも添えられている。

つまり、たるみについて自分でやるのは「見る」ところまで。数字が規定から外れていたら、そこから先は販売店・整備工場の仕事だ。この記事でも、張り直しの手順は扱わない。

張りすぎ・ゆるすぎで、メーカーは何と言っているか

規定から外れると何が起きるのか。ホンダのドライブチェーン/スプロケット|ベンリィちゃんと学ぶバイクメンテ|Honda公式サイトは、両方向について触れている。

  • 張りすぎた状態で乗っていると、チェーンが早く伸びる
  • ゆるいと、スプロケットとのかみ合いがうまくいかないことがある

同じページは、もう一歩先まで書いている。自転車のチェーンが歯車から外れ、一度外れてからは何度も簡単に外れるようになった、という話が出てくる。その原因について、同ページは「チェーンが伸びて、ゆるくなってしまったこと」だろうと答えている。自転車を例にした説明だが、ゆるみが外れにつながるという因果は、この公式ページの中に書かれている。だから日頃から張り具合を点検しておく必要がある、と続く流れだ。

そのうえで同ページは、日常点検で張りすぎ・ゆるすぎが見つかった場合は、すぐにホンダの店で調整してもらうよう案内している。状態によっては交換もある、とも書いている。メーカーが読者に求めているのは、自分で張り具合を追い込むことではなく、ずれに気づいて店に持ち込むことだ。

点検の間隔は、メーカーと国で言い方が違う

どのくらいの頻度で見ればいいのか。根拠になる記載は3か所にある。

ヤマハのメンテナンス|ヤマハ発動機は、定期点検項目表の中で、チェーンのたるみ・アライメントと状態の確認を、走行800km毎および洗車後や雨中の走行後というタイミングで挙げている。距離だけでなく、水を浴びた直後を名指ししているのが実務的だ。

ホンダの解説ページは、チェーンのゆるみの点検がホンダ指定の1ヶ月目の点検項目にも含まれるとしたうえで、張り具合は日頃から見ておく必要があると書いている。

国の側はどうか。国土交通省の点検整備の種類|自動車|国土交通省は、日常点検整備の実施が、法令でユーザーの義務と定められていることを明記している。そのうえでマイカーのユーザーについては、走行距離や運行時の状態などから判断し、適切な時期に実施してほしい、という書き方をしている。そして、少しでも「いつもと違う…」と感じたときは、整備工場に相談を、と書いている。

その日常点検の中身について、前出の日本二輪車普及安全協会のページは、二輪車の点検項目を10並べている。その最後、10番目に来るのが「チェーンの緩み、たるみすぎ、はりすぎ」だ。同ページによれば、前の9つは法律に規定された点検項目で、このチェーンの1つだけがメーカーの指定による点検項目だという。法令の項目ではないが、点検すべきものとして並んでいることに変わりはない。

まとめると、走った距離と、雨や洗車で水を浴びたかどうか。この2つを引き金にして見る、という運用に落とせる。タイヤの空気圧も同じ日常点検の項目なので、バイクのタイヤ空気圧、点検頻度は月1回?2週間に1回?適正値の調べ方と正しい入れ方と同じタイミングでまとめて済ませると、どちらも忘れにくい。

注油の前に、シールかノンシールかを確かめる

チェーンには構造の違う2種類がある。ヤマハのドライブチェーンの基礎知識|ヤマハ発動機は、こう説明している。シールチェーンはピンとブッシュの間にグリースを入れ、シールリングで密封したもの。ノンシールのほうは、チェーンオイルで潤滑する。

この違いが効いてくるのが用品選びだ。前出のヤマハのメンテナンスページは、チェーンクリーナーとチェーンオイルにシールチェーン用とノンシールチェーン用があり、分かれているため注意するよう書いている。買う前に自分のチェーンがどちらかを確かめる、という順番になる。

判断がつかないときは、取扱説明書の諸元を見るか、購入した店に車種を伝えて聞くのが早い。当てずっぽうで選ぶくらいなら、聞いたほうがいい。なお、この基礎知識のページも冒頭は同じで、部品の交換と車両の整備は販売店へ、という案内から始まっている。

注油で、やってはいけないことが公式に書いてある

清掃と注油の手順は、ヤマハ発動機の「乗らずに学べるバイクレッスン」自宅で出来るメンテナンス!ドライブチェーン編|ヤマハ バイク ブログが、自宅でできるメンテナンスとして公開している。ここから先は、そのページに書いてあることだけを拾う。ちなみに同じヤマハでも、自宅向けに出ているのは清掃と注油までで、たるみの張り直しの手順は、このページには出てこない。

まず、作業に入る前の前提がある。同ページがはじめに勧めているのは、リアタイヤを浮かせることだ。メンテナンススタンドがあれば作業効率が格段に上がるという。センタースタンドの付いた車両も楽だが、サイドスタンドしかない場合は、車体を少しずつ動かして、チェーンの位置をずらしながら進めることになる。1周させるのに約5m動かす計算になるので、広い場所が要る、とも書かれている。ここが抜けると、そもそも作業が始まらない。

  • タイヤやスイングアームといった周りの部品に汚れが飛ばないよう、新聞紙や段ボールで養生する。タイヤに油分が付くと滑るから、という理由も添えられている
  • チェーンとスプロケットに残った古いグリスと汚れを落とす。チェーンクリーナーをまんべんなく吹き付け、ブラシでこする。落ちたらウエスで拭き取り、乾燥させる
  • このページは、オイルは必ず専用のシールチェーン用を使うように書いている。潤滑剤のような物を吹き付けてはいけない、とも明記されている。石油系の溶剤は、Oリングを傷めて寿命を縮めるからだ
  • 吹き付けるのは内側。オイルは遠心力で外側に浸透していく、というのがその理由として書かれている。狙うのはOリングとローラー部で、塗りすぎても飛び散るのでほどほどに、とある
  • 吹き付けが済んだら、ホイールを回してオイルを馴染ませる
  • 塗ったあと15分以上放置し、そのあとチェーンに残った余分なオイルを拭き取る

拭き取る理由も、同ページに書いてある。チェーンオイルは粘度が高く、そのままでは走行中に埃や砂が付着しやすくなるため。そしてもうひとつ、オイルが走行中に飛散して車体が汚れるのを防ぐため、とも書かれている。潤滑剤を使ってはいけない理由と合わせて、このページは「なぜそうするのか」まで書いている。

作業のタイミングについても記載がある。オイルが浸透して定着するには、ある程度の時間がかかる。だから走行前にやると飛び散って車体を汚す。出発の1時間前までに作業を終えておくこと、と同ページは書いている。ツーリング当日の朝、玄関先で慌ててやる作業ではないということだ。日帰りの支度を前夜までに片付ける話はツーリング初心者の持ち物リスト完全ガイド!日帰り・宿泊・季節別に徹底解説にもまとめてあるので、チェーンもその前夜の枠に入れてしまうといい。

なお同ページには、雨の中を走ったあとについても一言ある。チェーンの油分が抜けやすいので、早めに手を入れよう、という趣旨だ。点検の引き金と注油の引き金は、どちらも雨ということになる。

チェーンだけ新品にしても、かみ合う相手は古いまま

伸びたチェーンを交換するとき、もうひとつ見る場所がある。相手側のスプロケットだ。

前出のヤマハのメンテナンスページは、スプロケットについて3つのことを書いている。ひとつ、歯が細く尖ってきていないかを見ること。ふたつ、摩耗が激しいのは、ドライブスプロケットよりドリブンスプロケットのほうだということ。みっつ、歯が4分の1ほどすり減っていたら交換で、そのときはチェーンと2枚のスプロケットをまとめて替えること。

ホンダの解説ページも、エンジン側のスプロケットが摩耗すること、そして張り具合が適切に見えてもチェーンとスプロケットは使ううちに痛んでくるので定期点検も忘れないように、と触れている。費用は上がるが、見るべき場所としてはセットだと思っておきたい。

錆びやすい場所にある、という前提で付き合う

チェーンには、雨も洗車の水もそのままかかる。走れば熱も持つ。だからヤマハのメンテナンスページは、汚れやすく、錆も出やすい部品だと説明している。カバーの中で守られている部品とは、前提が違うということだ。

だから点検も注油も、走ったあとに水を浴びたかどうかが引き金になる。冬のあいだ乗らずに置くつもりなら、保管に入る前の状態も見ておきたい。ほかの部位をどのくらいの間隔で見ればいいかはバイクメンテナンス、初心者はどのくらいの頻度でやるべき?点検項目・費用を完全ガイドにまとめてあるので、チェーンだけ突出させず、全体の枠に入れてしまうのがいい。

今日からの運用に落とすと

やることは多くない。

  • 自分の車両の規定範囲を取扱説明書で確認し、控えておく
  • スイングアームの下部分を指で押して、たるみを見る
  • 走った距離と、雨・洗車を引き金にして点検する
  • クリーナーとオイルは、シールかノンシールかを確かめてから買う
  • 養生してから注油。放置して拭き取る。出発の直前にはやらない
  • 規定から外れていたら、販売店・整備工場に持ち込む

チェーンは、よその数字を覚える部品ではなく、自分の車両の数字を控えておく部品だ。控えた紙が1枚あれば、あとは見て、ずれていたら持ち込むだけで済む。

参考にした情報源

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