立ちゴケは、止まっているときや押して動かしているときのように、ほとんど速度が出ていない場面でバイクを倒してしまうことだ。だから防ぐ手がかりは、押し方・停める場所・止まったところからの動き出しを見直すところにあるんだ。
この記事では、ヤマハ発動機の公式ブログ「乗らずに学べるバイクレッスン」のうち、取り回し・駐車・坂道発進を扱った3本をもとに、押す・停める・坂で止まる、の場面ごとに注意点を整理する。場面ごとに分けて並べたのはこの記事の整理だ。また、ここに書いたのは運営者が試した記録ではなく、ヤマハの説明をまとめたものだぞ。
先に結論|場面ごとのポイント
- 押して動かすとき:車体をなるべく垂直にし、体をバイクから離しすぎない。ヤマハは、垂直に立っていれば支える力はほとんど要らないと説明している。
- 停める前:路面の固さと傾斜を先に確かめる。ヤマハは、サイドスタンドなどが路面にめり込む場合や、傾斜で倒れる場合を挙げている。
- 前が下がった場所:停めるスペースの手前でいったん止まり、バックで入れる。
- 左右の傾斜が大きい場所:できるだけ避けるのが無難。どうしても停めるなら、傾斜の向きがバイクの前後方向になるように停める。
- 停めたあと:ハンドルを左右どちらか(ヤマハは左が理想としている)に切り、ギアをローに入れる。
- 上り坂で止まったとき:1速に入っているか確かめ、リアブレーキを使って発進する。ヤマハは、坂道発進でエンストしてバイクが下がり、立ちごけする場面を例に挙げている。
- 向きを誤って停めてしまい、一人ではどうしても動かせないとき:ヤマハは、無理をせず周りの人の力を借りようと書いている。
押して動かすとき|車体を垂直に、体を離しすぎない
ヤマハのレッスンでは、取り回しの基本姿勢を次のように説明している(ヤマハ発動機 バイクレッスン(取り回し 第1回))。
- バイクの左側に立ち、車体を垂直にして、ハンドルもまっすぐにする
- 視線は必ず進行方向へ向ける。同ページは、慣れていない人ほど手元を見てしまうことが多いと書いている
- 体とバイクの間を空けすぎない。場合によっては体の一部でも車体を支える
- 足元が滑りやすいこともあるので、取り回す前に路面の状態を確かめる
同ページによると、取り回しが苦手な人は、反対側へ倒すのを怖がって自分の側へ傾けすぎたり、体がバイクから離れたりしがちだという。だから最初に、車体を垂直に立てる基本を体で覚え込んでほしい、とヤマハは書いている。怖がる人ほど、垂直に立てられないまま押しにくくなっている場合が多い、というのがその理由だ。垂直に立っていれば、支えるのにほとんど力は要らないとも書いている。
小柄で不安な人に向けては、自分の側へ傾ける角度をできるだけ小さくし、腕と一緒に体をバイクに寄せ、腰などで車体を支える方法を紹介している。
押し出すときと、曲がるとき
- 押し出し:いちばん力を込めるのは動き出しの瞬間で、動いてしまえばそれほど力は要らない。行きたい方向へ体も向けて押す
- 前へ下っている場所:動き出したあとが不安なら、フロントブレーキのレバーに指を添えたまま、すぐに握れる状態で押す
- いつもよりやけに重い:タイヤの空気圧などを点検する。空気圧が低いと転がりにくくなり、押す力が余計に要る
- 押しているときの音:乗っているときには気づかないことでも、押すだけで分かることがある。チェーンやブレーキから異音がしていないかなどにも注意する
- 左回り:取り回しが苦手な人はハンドルをいっぱいまで切れていないことが多いとして、体を離しすぎずに切るよう書いている。もっと小さく回りたいときは、バイクを自分の側へ大きく倒し、体で支えながら回る
- 右回り:反対側へ倒す怖さがあるので、車体を垂直に保つことを意識する。押している間は、体をバイクから少し離すと押しやすくなるという。体格にもよるが、くっつきすぎて足を動かす場所もない状態だと押すのが大変だ、とも書いている。押し始めは体で車体を押してきっかけを作り、動き出したら足元のスペースのために隙間を空ける。小柄な人は、少しだけ自分の側へ傾けて腕と体で支える方法もあるが、傾けすぎると支えきれずに左へ倒してしまうことがあると注意している
ヤマハは、取り回しを練習するなら必ず場所を選び、周りに気を付けて行うこと、近くに補助してくれる人がいるなら必ず補助を頼むことも書いている。
後ろへ下げるとき
続きの回で、ヤマハはバックのしかたを2通り紹介している(ヤマハ発動機 バイクレッスン(取り回し・駐車 第2回))。
- 両手でハンドルを持ち、顔だけ後ろへ向けて引く。このとき車体は垂直のまま、ハンドルが左右に切れないように注意する
- 左手はハンドル、右手はシートの上(またはグラブバーなど)に置き、体ごと後ろへ向けて押す。同ページは、こちらのほうがバックしやすく、小さな段差も越えやすいとしている
2つめの方法だとブレーキを握れないのが怖い、という人向けに、ギアをローに入れてクラッチを握った状態で押し、止めたいときはクラッチを離す、というやり方も紹介している。上り坂をバックで押し上げるときに、バイクが前へ戻らないようにする方法にもなるという。
停める場所|路面・傾斜・ハンドルとギア
同じ回でヤマハは、駐車するときの注意点を挙げている。
停める前に、路面の固さと傾斜を見る
駐車中はタイヤのほかに、サイドスタンドやセンタースタンドが地面に触れる。ヤマハは、タイヤでは何ともない路面でもスタンドだとめり込む場合があるので、路面の固さや、傾斜でバイクが倒れないかを必ず事前に確認するよう書いている。
前が下がった場所は、バックで入れる
ヤマハによると、道の駅やSAなどではバイクの駐車場所が傾いていることがよくあり、前が下がった状態で停めると出すときに苦労する。ツーリングの荷物を満載していると、バックさせるのはなおさら大変だという。
だから、前が下がった場所では停めるスペースの手前でいったん止まり、バックで駐輪する。これがヤマハの案内だ。ツーリングの荷物の考え方はツーリング初心者の持ち物リストにまとめてある。
左右の傾斜が大きい場所は、できるだけ避ける
ヤマハは、左右の傾斜が大きい場所に停めると、車体がさらに大きく傾いたり、逆にほとんど傾かなかったりする場合も多いとしている。
- 傾きが大きくなった場合:サイドスタンドがバイクの重さに耐えきれずに外れたり、スタンドが路面にめり込んだりすることがある
- 傾きが小さい場合:誰かがうっかりぶつかっただけで、簡単に倒れてしまうことも考えられる。ヤマハは、ぶつかったのが子どもだったら、倒れた先に子どもがいたら、と注意を促している
傾斜が大きい場所はできるだけ避けるのが無難で、どうしても停めるなら傾斜の向きがバイクの前後方向になるように停めると安定する、というのが同ページの説明だ。駐車するときは、左右の傾きも考えて停めるよう書いている。
停めたら、ハンドルを切ってギアをローに
ヤマハは、駐車するときはハンドルを左右どちらか(理想は左)に切り、ギアをローに入れることも忘れないよう書いている。
前下がりに停めてしまって、出せないとき
向きを間違えて停めてしまい、一人ではどうしても動かせないときについて、ヤマハは周りの人の力も借りようと書いている。無理をして倒して壊してしまえば、そのあとのツーリングも楽しくなくなる、という理由だ。
一人のときで、上で紹介したバックの方法でも下げられない場合に向けて、同ページはフロントフォークの縮みを使う方法も紹介している。
- バイクの左に立つか、跨った姿勢で行う(最初は跨った姿勢がおすすめとしている)
- ブレーキを握ったまま、体全体でハンドルを下へ押してフロントフォークを縮める
- フォークが戻ろうとする反動に合わせてブレーキを離し、同時にバイクを後ろへ引く。少しずつ下げられる
ヤマハはポイントを「ブレーキを離して引く」タイミングだとし、後ろの周りの確認を前もってしっかり行うよう書いている。
上り坂で止まったとき|エンストして下がらないように
ヤマハの別のレッスンは、坂道発進に失敗してエンストし、バイクが下がって立ちごけする場面を入り口に、上り坂での発進を説明している(ヤマハ発動機 バイクレッスン(オンロードの坂道発進))。同ページが示す流れは次のとおりだ。
- ギアが1速になっているか確かめる。1速以外だとエンストのおそれがあるので、1速にする
- 後ろへ下がらないように、リアブレーキを少し強めにかける
- まず後方の安全を見る。そのうえでスロットルを開けて、ふだんの発進のときより回転を上げる(どのくらい上げるかは坂の勾配で変わるとしている)
- クラッチを半クラッチの位置までつないでいくと、エンジン音が少し小さくなり、リアのサスペンションが沈むのが分かる
- スロットルと半クラッチを保ったまま、リアブレーキをゆっくり緩めていく
- 動き出したら左足を地面から浮かせ、車体が安定してからステップに載せる
同ページは、坂道発進でエンストしてしまうケースとして、半クラッチを保てず一気にクラッチを離す、半クラッチからスロットルを戻す(または開けが足りない)、リアブレーキを踏みっぱなしにする、の3つを挙げている。
もしエンストしたら、あわてないこと。ヤマハの案内は、リアブレーキをかけ、クラッチを握ってからエンジンを再始動し、もう一度やり直す、というものだ。坂道がまだ不安なら、平らな場所でリアブレーキを緩めながら発進する練習をするのもよい、とヤマハは書いている。
まとめ
- 押すときは、左側に立って車体をなるべく垂直に。体を離しすぎず、視線は必ず進行方向へ(ヤマハ)
- いつもより重いと感じたら、タイヤの空気圧などを点検する(ヤマハ)
- 停める前に、路面の固さ(スタンドのめり込み)と傾斜を確かめる(ヤマハ)
- 前が下がった場所には、手前で止まってバックで入れる(ヤマハ)
- 左右の傾斜が大きい場所は、できるだけ避けるのが無難。停めるなら傾斜が前後方向になるように(ヤマハ)
- 停めたらハンドルを切り(理想は左)、ギアをローに(ヤマハ)
- 上り坂では1速を確かめ、リアブレーキを使って発進する(ヤマハ)
- 向きを誤って停めてしまい、一人ではどうしても動かせないときは、周りの人に手を借りる(ヤマハ)
立ちゴケで傷を付けてしまったときの備えを考えるなら、バイクの任意保険の選び方も見ておいてくれ。次にバイクを停めるとき、まず足元の路面と傾きを見る。それだけでも、倒さないための準備になるはずだ。


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