トンネルに入ったとたん、シールドが白くなって前が見えにくい。雨の日、信号待ちで息をするたびに視界がにじむ。気温が下がってくると、気になり始める悩みだ。先に要点を3つ書いておく。
- 曇りそうな場面では、先にシールドを少し開けておく。アライのRX-7Xの取扱説明書は、トンネルや急な雨などで急に曇ることがあるとして、予想できるときはシールドをわずかに開けて内外の温度差を減らし、安全な速度に調節するよう注意している。
- ピンロック(防曇シート)は、付けていても曇ることがある。SHOEIの取扱説明書には、汗や呼吸で湿気がこもり続けるとシートが水蒸気で飽和し、曇りやにじみが出る場合があると書かれている。
- 曇り止め・撥水剤は、塗る面と種類を間違えない。ヤマハのケミカルでは、くもり止めはシールドの内側、撥水剤は外側に使う。SHOEIは自動車用のコーティング剤をシールドに使わないよう案内し、アライのRX-7Xの取扱説明書は車窓用の撥水剤でシールドにヒビ割れが起きるおそれがあるとしている。
この記事は、SHOEIとアライ(アライヘルメット)の取扱説明書・公式ページ、ヤマハ発動機の公式ブログに書かれていることを土台にまとめた。特定の商品を実際に使って比べた記事ではない。ヘルメットの仕組みはメーカーやモデルで違うので、最後は自分のヘルメットの取扱説明書で確かめてほしい。出典は各節と記事の最後にリンクしてある。
シールドはなぜ曇るのか
アライのフルフェイスRX-7Xの取扱説明書(PDF)は、走行中の曇りを次のように説明している。ヘルメットの中の温度はほぼ変わらないが、ライダーは速い速度で動いているので、周りの気温や湿度は変わり続ける。だから高低差のある峠道、突然の雨、トンネルに入る・出る瞬間などには、ヘルメットの内側と周りとの急な温度差でシールドに結露が起き、急に曇ってしまう場合がある。
同書は、結露が付くのがシールドの外側か内側かは状況で変わる、とも書いている。内側を拭けば済むとは限らない、ということだ。
湿気の元になるものについても、メーカーの説明がある。
- SHOEIの防曇シート(PINLOCK)の取扱説明書(PDF)は、激しい発汗や呼吸、低温で湿度が高いといった曇りやすい条件を挙げ、チンカーテンを付けるとあごの部分の換気が弱まって曇りやすくなる、としている。
- アライのRX-7Xの取扱説明書は、激しい雨でチンカバーが湿ったまま使うと、ヘルメット内の湿度が上がって曇りが助長されるおそれがあるとして、激しい雨の中を走るときはチンカバーを外して使うよう書いている。
チンカーテン・チンカバーの着脱の可否や方法はモデルで違う。上の2つはそれぞれのメーカーの製品についての記載なので、自分のヘルメットの取扱説明書で確かめたい。
曇りそうなとき・曇ったときにやること
シールドをわずかに開けて、温度差を減らす
前の節のアライの取扱説明書は、急に曇るような状況が予想されるときは、シールドを微開にして前もって内外の温度差を少なくする、安全を確保できる速度に調節する、などの注意が必要だとしている。トンネルの手前や、雨が降り出しそうな峠道で思い出したい一文だ。
「プリセットレバー」「デミストポジション」を使う
シールドを少しだけ開けた位置で止める仕組みを持つヘルメットがある。
- SHOEIの製品に関するよくあるご質問(その他)によると、シールドの左下にあるレバーは「プリセットレバー」といい、下げるとシールドを微開の位置にできる。シールド内の曇りを取ったり換気したりを簡単にするための装備で、特に曇りに大きな効果がある、とSHOEIは説明している。
- アライのRX-7Xの取扱説明書では、シールドのロックを解除すると少し開いて隙間ができ、そこから入る外気が曇りを軽くする。この状態を「デミストポジション」と呼んでいる。
どちらもそのモデル(シールド)に付いている機能で、全部のヘルメットにあるわけではない。自分のヘルメットにレバーがあるか、操作のしかたはどうかは、取扱説明書で確かめてほしい。
ここからは書き手の考えだ。走りながらシールドの操作をするのに慣れていないなら、曇りが取れない状態のまま走り続けず、安全な場所に止まってから換気したり拭いたりしたほうがいい。
ピンロック(防曇シート)の仕組みと、付けても曇るとき
仕組み:シールドとの間に空気の層をつくる
SHOEIの防曇シートの取扱説明書によると、PINLOCKはシールドの内側に透明で柔らかい防曇シートを取り付け、シリコン製のシールでシールドとの間に密閉された空間をつくる。シート自体の防曇効果と、シールドとの2層の構造によって曇りを抑える、という仕組みだ。
同書は、シートを付けるには専用のシールドが必要で、タイプによって合うシールドが違うとしている。専用以外のシールドを加工したり、純正以外のピンを付けたりしないように、とも書いてある。SHOEIのシールドと防曇シートの組み合わせは、同社のシールド・防曇シート適合表で確かめられる。
付けても曇る・にじむとき
同書のご注意のうち、曇りに関わるものを拾うと次のとおりだ。
- シートは湿気を吸うことで曇りを止めている。ただし激しい発汗や呼吸、低温多湿など曇りやすい条件で、ヘルメットの中が閉じたままの状態が続くと、水蒸気でシートが飽和し、付けていてもにじみや曇りが出ることがある。
- そうなったときは、すぐに使用をやめ、シートをシールドから外して十分に乾かし、ロアエアインテークを開ける、プリセットレバーのあるモデルならシールドを微開にするなどして、ヘルメットの中をよく換気するよう書かれている。
- シールドとシートの間が曇ったり、雨水が入ったりしたときは、シートを外し、シールドとシートの両方を十分に自然乾燥させてから付け直す。
- シリコンのシールが全周にわたってシールドに密着しているかを、ヘルメットに付けた状態で確かめる。隙間があるときの調整方法も同書に載っている。
- シートは気候で伸び縮みしたり、長く使うと取り付け部分が変形したりする場合があるので、取り付けの状態を定期的に確認し、調整できる範囲を超えたら交換する。
同書には、クリア以外のシールドにシートを付けた状態で夜に走らないこと、スモークシールドに色付きのシートを決して付けないことなど、視界の暗さに関する注意もある。付ける前に一度、全体を読んでおきたい。
シートの洗い方と保管
同書によると、シートはシールドから外し、水で薄めた中性洗剤で洗ってよくすすぎ、柔らかい布で水気を取ってから自然乾燥させる。ベンジン、シンナー、ガソリン、ガラスクリーナー、アルコール類などの溶剤は絶対に使わないこと、ドライヤーや直火で乾かさないこと、と注意している。
外したシートの保管については、SHOEIの防曇シートについてのよくあるご質問が、柔らかい布などで包み、直射日光や高温になる場所を避けて室内に置くよう案内している。
曇り止めスプレーや撥水剤を使うとき
ヤマハのケミカルでは、くもり止めは内側・撥水剤は外側
ヤマハ発動機のヘルメット用ケミカルを紹介したバイクブログによると、ヤマルーブの「ヘルメットシールドくもり止め」は、シールドの内側に吹き付けてから拭き取って使う。一方の「ヘルメットシールド撥水剤」は外側に吹き付けて拭き取り、雨の日にシールドの水滴をはじくためのものだ。同記事は、クリーナー・撥水剤・くもり止めのいずれについても、ミラーシールドには使わないように、コーティングが剥がれるおそれがある、と注意書きを付けている。
曇りは内側だけとは限らない(前述のアライの説明)が、ヤマハの2つの薬剤は塗る面が分かれている。雨で外側の視界が悪いのか、息や湿気で内側が曇っているのかを分けて考えると、選ぶものを間違えにくい。
自動車用のコーティング剤は使わない
- SHOEIのよくあるご質問(その他)は、クルマのフロントガラスなどに塗るコーティング剤について、ガラス向けに作られているものがあるとして、シールドには使わないよう答えている。撥水剤は必ずヘルメット用のものを使うように、というのが同社の案内だ。
- アライのRX-7Xの取扱説明書は、アルコール入りのクリーナーやシンナー系の溶剤、ガソリンなどを手入れに使うと塗装面や素材が侵されるとして、絶対に使わないよう注意している。続けて、これらが付いた場合や、車窓用の撥水剤などを使った場合に、素材が侵されてシールドにヒビ割れが起き、万一の衝撃のときに壊れるおそれがある、とも書いている。
ここも書き手の考えを足しておく。ヘルメット用として売られている薬剤でも、ミラーシールドには使えないなどの制限がついていることがある。防曇シートを付けたシールドに曇り止め剤を併用してよいかは、今回読んだSHOEIの防曇シートの取扱説明書の中には見つけられなかった。使う前に、薬剤の説明とヘルメット側の取扱説明書の両方を確かめ、分からなければ購入した販売店やメーカーに聞くのが確実だ。
シールドを拭く・洗うときに気をつけること
曇りを取ろうとして、手近な洗剤やクリーナーで拭くのは避けたい。SHOEIとアライは、公式ページや取扱説明書で、使うものと使わないものを書いている。
- SHOEIのヘルメットのメンテナンス方法は、シールドを含むプラスチック部品の手入れには、薄めた中性洗剤を使うよう案内している。家庭で使う洗剤でも、酸性やアルカリ性のもの、ガラスクリーナーは控えるように、とある。石油系の有機溶剤については、しみ込んで素材を傷め、たやすく割れたり溶けたりする原因になることがあるとして、絶対に使わないよう注意している。
- アライのRX-7Xの取扱説明書は、シールドにオイルやワックス、ガソリンなどが付くと、目に見える変化がなくても素材が侵されるので、定期的なクリーニングを勧めている。薄めた中性洗剤で油分などを洗い流し、流水で十分にすすいでから、柔らかい布で水分を拭き取る手順だ。硬くなった虫汚れは、真水に浸けて柔らかくしてから拭き取る。ただし、中性洗剤を薄めた液にシールドを長時間浸けるのは絶対にやめるよう書いている。
傷のついたシールドは、早めに交換する
ここは書き手の足しだが、拭いても見えにくさが残るときは、シールドに傷がないかも見てほしい。SHOEIのヘルメットのメンテナンス方法は、傷のあるシールドについて、夜に灯りが反射したときや雨の中で見えにくくなる場合があり危険だとして、早めの交換を心がけるよう呼びかけている。
防曇シートについても、SHOEIの取扱説明書は、シートはシールドより傷が付きやすいので取り扱いに十分注意し、防曇性能が落ちたり傷が付いたりしたら新しいものに交換するよう案内している。
まとめ
- トンネルや急な雨、峠道の高低差で、シールドは急に曇ることがある。曇るのは内側とは限らない。
- 曇りそうなときは、シールドを少し開けて温度差を減らし、安全を確保できる速度に調節する。プリセットレバーやデミストポジションがあるモデルなら、それを使う。
- ピンロック(防曇シート)は、湿気がこもり続けると付けていても曇ることがある。換気し、シートを乾かす。
- ヤマハのケミカルでは、くもり止めは内側、撥水剤は外側。自動車用のコーティング剤や車窓用の撥水剤はシールドに使わない。
- 拭くときは薄めた中性洗剤。アルコールや溶剤は使わない(アライのRX-7Xの取扱説明書は「絶対に」使わないよう書き、SHOEIのヘルメットのメンテナンス方法も石油系の有機溶剤は「絶対に」使わないよう書いている)。ガラスクリーナーも控える(SHOEIのヘルメットのメンテナンス方法は「差し控えて」と書き、防曇シートの取扱説明書は、シートの手入れに絶対に使わないものの中に挙げている)。傷の付いたシールドは早めに交換する。
ツーリングに出る前の持ち物全体はツーリング初心者の持ち物リストに、バイク本体の点検の目安はバイクメンテナンスの頻度の記事にまとめてある。


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