バイクの発進でエンストする原因は?平地と坂道で違う見直し点と、動き出すレバー位置の覚え方

バイクの発進でエンストする原因は?平地と坂道で違う見直し点と、動き出すレバー位置の覚え方

信号が青になった瞬間にエンスト。後ろのクルマが気になって、次の発進でもまた止まる。慣れないうちは、焦る場面だ。先に結論を3つ書いておく。

  • エンストは、エンジンの力が足りずに止まる現象。クラッチを急につなぐ、回転を上げない、などで起きる。
  • 練習の入り口は「バイクが動き出すクラッチレバーの位置」を手で覚えること。ヤマハ ライディングアカデミー(YRA)事務局が、クラッチ操作に不安がある人に一番最初に知ってほしいポイントとして挙げている。
  • 坂道発進は、平地とは別に失敗の型がある。リアブレーキを踏んだまま、というのもその一つだ。

この記事では、メーカー公式の解説(主にヤマハ発動機のバイクブログ)に書かれている内容を土台に、平地と坂道それぞれの原因、練習のしかた、エンストしてしまったあとの動き方を整理した。出典はそれぞれの節と記事の最後にリンクしてある。

目次

そもそもエンストはなぜ起きるのか

ヤマハのクラッチの構造と操作のコツを解説した記事によると、クラッチはエンジンの出力を、ミッションを経て後輪へ伝える量を調整する部品だ。レバーを握れば力は伝わらず、放せばそのまま伝わる。その中間が半クラッチで、クラッチ板をわずかに滑らせながら力を少しずつ渡している。

同記事は、発進に半クラッチが要る理由をこう説明している。止まっている車体を動かし始めるにはある程度の力が要るので、クラッチなしでいきなりつながるとエンジンの力が負けて止まってしまう。逆に回転を上げた状態で一気につながれば、急発進になる。

同記事は、発進時の回転の上げ方についても、上げすぎと上げなさすぎの両方の問題を挙げている。

  • エンジン回転を上げすぎる → 摩擦熱でクラッチ板を傷め、急発進のリスクも高まる
  • エンジン回転をまったく上げない → 力が足りずに止まる(エンスト)

だから同記事は、発進では回転を少し上げながら、同時にクラッチを徐々につなぐ操作が必要だ、としている。「エンストが怖いから、とにかく回転を上げておく」は、別の問題を呼ぶということだ。

ヤマハの用語解説「半クラッチ」でも、発進時に半クラッチを使わずレバーを急に放せば、エンストするか勢いよく飛び出すだろう、と書かれている。

平地の発進でエンストするとき、見直す点

ヤマハ ライディングアカデミー(YRA)事務局のクラッチレバー操作についての記事は、レバー操作がうまくいかないときに起きることとして、坂道発進での後退やエンスト、発進時や低速でのギアチェンジ時のエンスト、発進に時間がかかる、ギアチェンジのたびに車体が前後に揺れる、を主な4つとして挙げている。以下では、そのうち平地の発進に関わるところを中心に、ヤマハの別の記事の内容も合わせて見ていく。

レバーをつなぐ指の動きが速い

同記事は、発進時や低速でのギアチェンジ時にエンストさせてしまう人について、クラッチレバーを扱う指の動きが速すぎるなど、操作が粗い人が多いようだ、と書いている。そのうえで、クラッチをつなぐときの指の動きを気持ちゆっくり、丁寧にすればエンストは大きく減るはずだ、としている。特に気をつけたいのは、クラッチがつながり始めるところだという。

なお同記事は、アクセル操作も連動していて重要だが、この回はクラッチ操作に絞って説明している、と断っている。指だけ直せば済む、という話ではない。

低速でのギアが合っていない

これは発進そのものより、動き出したあとの低速走行の話だ。同記事は、クラッチをつなぎ始めてからエンジンがガタガタと音や振動を大きくするなら、ギアが合っていない可能性が高いので、1段低いギアを選ぶように、と書いている。

エンジン回転を上げていない

前の節で見たとおり、ヤマハのクラッチ構造の記事は、回転をまったく上げないと力が足りずに止まる、としている。発進でのスロットルの開け方については、同記事は車両によって異なると断ったうえで、250ccくらいの小排気量車ならおおよそ1/8程度、ほんの少し、と目安を書いている。自分のバイクがそれに当てはまるとは限らないので、あくまで目安として読んでほしい。

坂道発進でエンストするときの原因

坂道では平坦な道より加減速の調節がしにくい、とヤマハの免許カテゴリの解説(後述)も書いている。坂道発進については、ヤマハのバイクブログに複数の解説がある。

ヤマハ発動機販売の担当者による坂道発進(オンロード編)の記事は、失敗してエンストする人について、次の3つのケースが考えられる、としている。

  • 半クラッチを維持できず、レバーを一気にパッと放す
  • 半クラッチの状態からスロットルを戻してしまう、あるいはスロットルの開けが足りない
  • 後輪のブレーキを踏み続けていて、緩めていない

また、2017年の大人のバイクレッスンの記事では、インストラクターが坂道発進のエンストの原因として、クラッチを放しすぎる、クラッチを放すときにアクセルを戻してしまう、発進時に後輪ブレーキを踏んだまま、を「など」として挙げている。顔ぶれは上の3つとほぼ重なる。

坂道発進の流れは、オンロード編の記事では次の順で説明されている。

  1. ギアが1速か確かめる(それ以外だとエンストのおそれがある)
  2. 後ろに下がらないよう、リアブレーキを少し強めにかける
  3. 後方の安全を確かめてからスロットルを開け、回転を普段の発進より上げる(どれくらい上げるかは坂の勾配で違う)
  4. 半クラッチの位置までレバーを放していくと、エンジン音が少し小さくなり、リアサスペンションが沈むのを感じる
  5. スロットルと半クラッチを保ったまま、リアブレーキをゆっくり緩める

ヤマハの免許カテゴリの坂道発進の解説も、クラッチのつなぎ方が速すぎるとエンストの原因になる、ブレーキを速く離しすぎると急発進の原因になるのでゆっくり緩めるのがコツ、と書いている。同じ記事は、技能課題としての坂道発進では、エンストや後退、急発進などが減点や試験中止の対象になる、としている。

坂道がまだ不安なら、平らな場所でリアブレーキを緩めながら発進する練習をするのもよい、とオンロード編の記事は書いている。

練習の入り口:動き出すレバー位置を手で覚える

先ほどのYRA事務局の記事が、クラッチ操作に不安がある人に最初に知ってほしいポイントとして挙げているのが、バイクが動き出すクラッチレバーの位置をつかむことだ。同記事で紹介されているやり方をまとめると、こうなる。危険のない、広くて平らな場所を選ぶように、とも書かれている。

  1. エンジンをかけ、クラッチを握ってギアを1速に入れた状態で乗る。左足を地面、右足はステップに置き、リアブレーキを踏んで止まる
  2. リアブレーキを離して右足も地面に下ろす。右手はアクセルを操作せず、フロントブレーキにも指をかけない
  3. クラッチレバーを少しずつ放し、バイクが動き始める位置を確かめる。歩くくらいの速さで2〜3m進んだら、クラッチを切って止まる
  4. これを繰り返す

ポイントは2つあるという。視線は必ず前、進む方向に向けること。そしてレバーを目で見ずに、手の感触だけで動き出す位置をつかむこと。メーターも見ない。前を見ていれば安全確認ができるし、自然と手の感覚で位置を覚えられる、という理屈だ。

位置をつかんだあとの発進のイメージは、ヤマハのクラッチ構造の記事に書かれている。スロットルを少し回すのと同時に、レバーを動き出す位置まですっと放す。そこから先は、スロットルをじわっと回しながらレバーもじわっと放していく。動き出す位置を指が覚えれば、発進への苦手意識はかなり解消されるだろう、と同記事は書いている。

YRA事務局の記事によれば、発進に時間がかかる人は、握ったレバーを動き出す位置まで持っていく動きに時間をかけすぎているのが大きな理由だという。そこまでは素早く、そこから先を丁寧に。エンストが怖くて全体をゆっくりにしている人は、この切り分けを意識してみてほしい。

エンストしてしまったら

坂道の場合について、オンロード編の記事は、失敗してエンストしても焦らず、まずリアブレーキをかけ、そのあとでクラッチレバーを握って再始動し、もう一度やり直すように、と書いている。リアブレーキが先で、クラッチを握るのはそのあと、という順番だ。大人のバイクレッスンの記事でも、エンストしても焦らず落ち着いてやり直すように、とされている。

発進に失敗してエンストし、バイクが下がって立ちごけする——オンロード編の記事は、坂道発進の説明をこの場面から始めている。坂でのエンストは、それだけで終わらないことがある、ということだ。

かけ直そうとしてセルがまったく反応しない、あるいはカチカチ鳴るだけ、というときもある。始動に必要な条件は車種と年式で違うので、まず自分のバイクの取扱説明書で確かめてほしい。その場で確かめる順番はバイクのセルが回らない・カチカチ鳴る|その場で確かめる順番とNG行動にまとめてある。

操作ではなく、バイクの側を疑うとき

練習してもどうしてもうまくいかない場合、操作だけの問題ではないこともある。YRA事務局の記事は、バイクの操作についての説明は、メンテナンスができている車両であることが前提だ、と明記している。そのうえで、クラッチが硬い、遊びが多すぎる・少なすぎるといった整備ができていない車両では、いくら正しく操作してもバイクを思いどおりにコントロールすることはできないと考えてほしい、と書いている。

モデルごとのメンテナンスは各取扱説明書に載っているので、それを参照し、不明点や疑問点は近くのヤマハスポーツバイク取扱店に相談を、というのが同記事の案内だ。なお、ヤマハ以外のバイクの場合は、購入した販売店などに相談するとよい。練習しても発進がぎこちないままなら、自己流でいじる前に、まず販売店に見てもらおう。点検の目安はバイクメンテナンス、初心者はどのくらいの頻度でやるべき?で整理している。

なお、ヤマハのクラッチ構造の記事では、動き出すレバーの位置が近すぎたり遠すぎたりする場合に、レバーのアジャスターで位置を合わせる方法にも触れている。ただし、エンジンを止めた状態で行うこと、車種ごとの調整方法は取扱説明書で確かめること、の2つが注意書きとして添えられている。取扱説明書に手順が載っていない、やり方に自信がない、という場合は販売店に任せたほうがいい。

クラッチ操作そのものを減らす仕組みもある

発進のクラッチ操作を電子制御に任せられるバイクもある。ホンダのHonda E-Clutch ポータルサイトによると、E-Clutchは発進・変速・停車でライダーがクラッチを操作する必要がなく、発進はクラッチを握らずにギアを入れ、スロットル操作だけでできる。ホンダは発進と停車について、エンストの心配はない、と案内している。クラッチレバーを握ればマニュアル操作に切り替えられる。

ただし機種によって扱いが違う。同サイトでは、CB400 SUPER FOUR E-Clutchなど一部の機種はメーターからシステムのON/OFFを選べ、OFFのときは通常のマニュアル車と同じくクラッチ操作が必要、と説明されている。一方、Rebel 250 E-ClutchやCL250 E-Clutchなどは、レバーを操作すると一時的に無効になるものの、常時無効にはできない、とされている。

これから1台目を選ぶ人にとっては検討材料の一つになる。すでにマニュアル車に乗っているなら、まずは上で紹介した「動き出すレバー位置を手で覚える」練習を試してみてほしい。

まとめ

  • エンストは、回転が足りない・クラッチを急につなぐなどで、エンジンの力が負けて止まる現象。回転を上げすぎればクラッチ板を傷め、急発進のリスクになる
  • 平地では、つなぎ始めの指の動きを丁寧にする。スロットルの開け方は車両によって違う
  • 坂道でのエンストについて、ヤマハの記事は、半クラッチを維持できない、スロットルを戻す(または開けが足りない)、後輪ブレーキを緩めていない、の3つのケースを挙げている
  • 練習は、広く平らな場所で、アクセルを使わずに「動き出すレバー位置」を手で覚えるところから
  • 坂でエンストしたら、まずリアブレーキをかけ、クラッチレバーを握ってから再始動する
  • クラッチが硬い・遊びがおかしいと感じたら、取扱説明書を確認し、販売店に相談する

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ハーレーFXBR
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