冬のあいだバイクを置いておくなら、手を入れる順番は「洗う → 燃料 → バッテリー → タイヤ → カバー」の5つの手順に並べると迷いにくい。この記事では、それぞれの手順で何をするかを、ホンダ・ヤマハ・スズキの取扱説明書と、バッテリーメーカーのジーエス・ユアサの解説で確かめる。
- 洗う:海岸の近くや凍結防止剤(融雪剤)をまいた道を走ったあとは、ホンダもスズキも必ず洗車するよう書いている。スズキはその場合、温水ではなく冷水で洗うよう求めている
- 燃料:3冊とも「保管のしかた」の項には燃料の扱いが書かれていない。満タンにするか抜くかは、自分の車の取扱説明書と販売店で確かめる
- バッテリー:3冊とも、車体から外して充電し、置き場所を選ぶよう書いている。ヤマハとスズキは、長く使わないなら3か月ごとの補充電も求めている
- タイヤ:空気圧は少しずつ下がる。ホンダとヤマハは、少なくとも1か月に一度タイヤゲージで測るよう書いている
- カバー:屋外ならボディーカバーをかける。ホンダとスズキは、エンジンやマフラーが冷えてからかけるよう付け加えている
この順番は筆者の整理で、取扱説明書が決めている順番ではない。読んだのはホンダ スーパーカブ C125(2019年)、ヤマハ YZF-R25(2025年)、スズキの原付一種(99011-36GD0)の3冊で、ほかの車種では書き方が違うことがある。作業の前に、自分の車の取扱説明書の該当ページを開いてほしい。春まで置くか売るかでまだ迷っているなら、先に冬に乗らないバイクは保管か売却かで判断の材料を見ておくと話が早い。
手順1 洗う:凍結防止剤の塩分を落とし、乾かしてからワックス

ホンダのスーパーカブ C125の取扱説明書は、海水や路面の凍結防止剤に含まれる塩分が車体のサビを進めるとして、海岸付近や凍結防止剤をまいた路面を走ったあとは必ず洗車するよう書いている。スズキの取扱説明書も、融雪剤を使った道路を走ったあとは必ず洗車するよう求め、さらに「温水だと塩の腐食が進む」という理由で、すぐに冷水で洗って乾いた布で拭くよう書いている。冬の最後に走った道に塩がまかれていたなら、保管の前に落としておく理由がここにある。
洗う前と洗うときの注意は、3冊でおおむね同じ向きだ。
- 洗うのは冷えてから:ホンダはエンジン・マフラー・ブレーキなど高温になる部分が冷えるまで洗わないよう、ヤマハとスズキはエンジンが冷えているときに洗うよう書いている
- 強い水をかけない:ホンダは高圧洗車機を避けるよう、スズキは高圧洗車機とスチーム洗車機を使わないよう書いている
- 水を入れない場所:3冊とも、マフラーやエアクリーナーに水が入らないよう注意している(ヤマハは、洗うときマフラーにビニール袋をかけるなどの方法を挙げている)
- 洗ったあとのブレーキ:ヤマハは、洗車のあとブレーキのききが悪くなることがあるとして、低速で走りながら数回軽くブレーキをかけて湿りを乾かすよう警告している
洗い終わってからの流れは、C125の取扱説明書が番号つきで書いている。十分な水で洗剤を流してやわらかい布で拭き、車体を乾かしたあとにドライブチェーンと可動部分へ注油し、最後に腐食を防ぐためワックスがけをする、という並びだ。ワックスについては、3冊とも「保管の前に」という形でも求めている。ただしホンダはつや消し塗装の面、ヤマハはマット塗装の部分を除くとしていて、ホンダはつや消し塗装にワックスやケミカル類を使わないよう書いている。
道具や洗う順番の細かいところは、バイク洗車の手順と道具で扱っている。
手順2 燃料:取扱説明書の「保管のしかた」には書かれていない

今回読んだ3冊は、どれも「保管のしかた」の項で燃料に触れていない。その項にあるのはワックス・バッテリー・カバーなど(ホンダとヤマハは保管後の点検も)で、満タンにする・抜く、のどちらも出てこない。
燃料の項には、関係しそうな注意がある。C125の取扱説明書は、エンジンや燃料装置などの損傷を防ぐための注意として、軽油や粗悪ガソリンを使わないよう挙げ、その粗悪ガソリンの例として括弧の中に「長期間保管したガソリン」を入れている。どのくらいの期間を「長期間」と呼ぶかは書かれていない。
一方、Hondaのレンタルバイクサービスのサイト(Honda GO BIKE RENTAL)の長期保管の解説記事は、外部のライターの記事として、保管の前に燃料タンクを満タンにしておくことを勧めている。タンクの空いた部分に結露が起き、水分と空気でサビが出ることがある、という理由だ。これは取扱説明書の指示ではない。
満タンにするなら、取扱説明書の給油の上限は守る。ヤマハはフィラーチューブ下端の給油限度を超えて入れないよう、ホンダは給油口の下端以上に入れないよう、スズキは給油口下端より上に入れないよう書いていて、理由はどれも、ガソリンがにじみ出ることがあるためだ。
ここからは筆者の読み方です。取扱説明書に書いていない以上、満タンにするか抜くかをこの記事では決めない。春にタンクのガソリンを「長期間保管したガソリン」として扱うかどうかも関わってくる。冬の前に給油する予定があるなら、そのついでに、自分の車種で保管中の燃料をどうするかを販売店に聞いておくのが確実だ。
手順3 バッテリー:外して充電し、置き場所を選ぶ

バッテリーについては、3冊とも具体的な指示がある。「保管のしかた」の項(スズキはバッテリーの項も)に書かれていることを並べる。
| 取扱説明書 | 外してどうするか | 積んだままにする場合 | 補充電 |
|---|---|---|---|
| ホンダ C125 | 車から外して完全に充電し、風通しがよく暗い所に置く(自己放電と電気漏れを少なくするため) | -側のターミナルを外す | 保管の項には書かれていない |
| ヤマハ YZF-R25 | 外して充電器で満充電にし、湿気のない涼しい場所に置く | 保管の項には書かれていない | 劣化を抑えるため3か月ごと(補充電はヤマハ販売店に相談) |
| スズキ 原付一種 | 車から外して完全に補充電し、風通しがよく暗い所に置く(理由はホンダと同じ書き方) | -側のターミナルを外す | 長く使わないなら3か月ごと(補充電はスズキ販売店に相談) |
置き場所の言い方は「風通しがよく暗い所」と「湿気のない涼しい場所」で分かれていて、補充電の間隔を書いているのはヤマハとスズキだ。メーカーで違うところなので、自分の車の取扱説明書に合わせる。
バッテリーメーカーのジーエス・ユアサのバイク用バッテリーの充電方法とメンテナンスの解説も、長い間乗らないときは自己放電を抑えるためにマイナス端子を外しておき、長く保管したあとに乗るときは充電してから乗るよう書いている。同社のバッテリーが上がったときの解説には、冬に置く人に関わる記述が2つある。
- 寿命は使い方や気候などで大きく違い、平均すると2〜3年くらい。ただし降雪地などで乗らない期間がある場合、きちんと手入れをしないと1年未満で寿命になることがある
- 盗難防止装置を付けた車では、エンジンを止めていても20-30mAの暗電流がある。あまり乗らないなら、こまめな補充電をしないとバッテリー上がりにつながる
外す順番と、扱いの注意
外す順番は3冊とも同じ向きで、マイナス(-)側を先に外し、プラス(+)側をあとに外す。付けるときは逆で、ホンダとスズキはプラス側から先に付けるよう書いている。ホンダとスズキは、作業の前にメインスイッチがオフであることも求めている。シートやカバーの外し方、バッテリーの止め方は車種で変わるので、ここは自分の車の取扱説明書のバッテリーのページを開く。外し方と付け方はバイクのバッテリー交換は自分でできる?に詳しく並べている。
- ヤマハは、バッテリーが引火性のガス(水素ガス)を出すとして火気を近づけないよう警告し、補充電は風通しのよいところで、密閉式バッテリー専用の充電器を使うよう書いている
- ホンダは、電解液の希硫酸が眼や皮膚に付くと重いヤケドを負うとして、近くで作業するときは保護メガネと保護服を着け、子供の手の届く所に置かないよう警告している
- C125の取扱説明書は、バッテリーコードを外すと盗難防止アラームが解除されること、付け直したときに時計がずれていたら合わせ直すことも書いている。装備のある車は、付け直したあとの設定も取扱説明書で確かめたい
手順4 タイヤ:冷えているときに、指定の空気圧へ

ホンダとヤマハの取扱説明書は、タイヤの空気圧は徐々に下がり、見た目では足りないと分かりにくいタイヤもあるとして、少なくとも1か月に一度はタイヤゲージで点検するよう書いている。測るのはタイヤが冷えているときで、走ったあとは温まって高く出ることがある、という理由も添えている。入れる値は車種ごとに決まっていて、取扱説明書に書かれている。
先のHonda GO BIKE RENTALの記事は、保管の前に空気圧を規定値まで入れておくことを勧めている。長く動かさないと車体の重さが同じ接地面にかかり続け、トレッドの一部が平らに変形する「フラットスポット」が起きる場合がある、という説明だ。同じ記事は、規定値はチェーンガードなどに貼られたコーションラベルでも確かめられるとしている。
ここからは筆者の読み方です。保管の前に指定の値へ合わせ、置いているあいだも取扱説明書の「少なくとも1か月に一度」をそのまま当てはめて測る。保管のために空気圧を上げ下げするやり方は、今回読んだ取扱説明書には書かれていないので、この記事では扱わない。測り方と入れ方はバイクのタイヤ空気圧、点検頻度は月1回?2週間に1回?にまとめている。
手順5 カバー:エンジンとマフラーが冷えてから

ヤマハとスズキの取扱説明書は、車はできるだけ(自宅の)敷地内に置き、屋外に置くならボディーカバーをかけるよう書いている。ホンダも屋外ならカバーをかけるよう書き、ホンダとスズキは、カバーはエンジンやマフラーが冷えてからかけるよう付け加えている。
C125の取扱説明書は、長く使わない場合の注意として、雨上がりにはカバーを外して車体を乾かすことも挙げている。かけたら終わりではなく、天気のあとに一度外す手間が入る、ということだ。
冬のあいだ同じ場所に置きっぱなしになるなら、盗難の対策も一緒に考えておきたい。警視庁が挙げている補助錠や駐輪場所のポイントはバイクの盗難対策は?で扱っている。
春に乗る前に
保管が終わったあとについても、3冊とも書いている。ホンダは保管した期間を考えたうえで各部を点検する、ヤマハは走る前にバッテリーを充電して各部を点検する、スズキは長く休ませたあとに使い始めるときは入念に点検することが大切だ、という書き方だ。ジーエス・ユアサも、長く保管したあとは充電してから乗るよう書いている。
外していたバッテリーを付けるときは、手順3のとおりプラス側から。洗車のあとと同じく、走り出しのブレーキのききも確かめておきたい。どこをどのくらいの頻度で見るかはバイクメンテナンス、初心者はどのくらいの頻度でやるべき?で整理している。

まとめ
冬の保管の前にやることを、取扱説明書に書かれていることを中心に並べると次のとおりだ(燃料の「販売店に聞く」は筆者の考え)。
- 洗う:凍結防止剤をまいた道を走ったなら必ず洗う(スズキはその場合は冷水で)。冷えてから洗い、乾かして注油し、ワックスをかける(つや消し・マット塗装は除く)
- 燃料:3冊の「保管のしかた」には書かれていない。満タンにするなら給油口の下端(給油限度)を超えない。どうするかは販売店に聞く
- バッテリー:マイナス側から外して充電し、取扱説明書の言う場所に置く。ヤマハとスズキは3か月ごとの補充電も求めている
- タイヤ:冷えているときに指定の空気圧へ。少なくとも1か月に一度は測る
- カバー:屋外ならエンジンとマフラーが冷えてからかけ、雨上がりには外して乾かす
書き方はメーカーで違うところがある(置き場所の言い方、補充電の間隔、積んだままにする場合の扱い)。作業の前に、自分の車の取扱説明書を開いて、この記事と食い違うところは取扱説明書のほうに合わせてほしい。



