バイクのバッテリーを自分で載せ替えるとき、いちばん最初に覚えることは順番だ。外すときはマイナス側から、付けるときはプラス側から。カワサキのよくある質問にも、ヤマハの取扱説明書にも、バッテリーメーカーのページにも、同じ向きで書いてある。端子がファストン端子の場合は、外し方そのものが変わる(車両側のカプラごと外す・後述)。順番の注意はそちらにも掛かっている。
この記事では、カワサキモータースジャパンのFAQ、ヤマハ発動機の取扱説明書(MTN250)、ジーエス・ユアサの交換手順のページを読んで、①順番とその理由 ②手を付ける前に決まっている条件 ③買う前に照らし合わせること ④付けたあとの確認 ⑤外した古いバッテリーの行き先 を整理した。
先に断っておくと、これは運営者が交換作業をやってみた記録ではない。資料に書いてあることと、書き手の整理は分けて書く。作業をするかどうかの判断は、自分の車種の取扱説明書を開いてから決めてほしい。
先に順番だけ覚える 外すのはマイナスから、付けるのはプラスから
カワサキモータースジャパンのFAQサイトに、「バッテリーが上がってしまった場合、自分で交換してもいいですか。」という項目がある。回答はまず、ふつうに交換してもらってかまわない、と答えている。そのうえで、手順を次のように示している。
- 手を付ける前に、イグニッションスイッチは切っておく
- 車体から外すケーブルの順は、負極(-)が先、正極(+)があと
- 取り付けはその逆で、正極(+)を先に、負極(-)をあとに回す
- 時計のように設定が飛ぶ機能は、交換のあとで入れ直す
同じFAQは、極性を入れ違えてつなぐことと、フレームなどに接触させることを、どちらも危険だとしている。そのうえで、心配ならカワサキ正規取扱店で交換してもらうことを勧めている。
ヤマハ発動機のMTN250の取扱説明書(PDF)も、取り外しの手順として、マイナス側のリード線を外してから、プラス側のリード線を外すと書いている。取り付けは取り外しと逆の手順だとしている。
なぜこの向きなのかは、バッテリーメーカーの説明が分かりやすい。ジーエス・ユアサの「バイク用バッテリーの交換方法(VRLA)」は、取り付けのときにスパナやレンチなどの金属工具でプラスとマイナスを接触させないよう注意している。スパーク(火花)によって引火爆発や火災の原因になる、という理由だ。マイナス側を先に外しておけば、その後に工具が車体に触れても、電気の通り道がひとつ減っている状態になる。ここは書き手の理解の書き方だが、同ページは順番を絶対に間違えないようにとも書いており、逆につなぐことを電気回路の故障・配線の焼失・引火爆発と結びつけている。
手を付ける前に決まっている条件
順番の前に、作業を始めてよい状態かどうかがある。ジーエス・ユアサの交換手順のページは、開放式・VRLAのどちらの説明でも、冒頭に同じ条件を置いている。
- 取り外し・取り付けは、必ずエンジンを止めてキーを抜いてから行う
- 走ったあとに交換するなら、バッテリーを30分以上 休ませてから始める(走行直後は内部にガスがたまっていて、爆発事故につながる恐れがあり危険だ、というのが理由)
- 交換そのものは、必ず車両の取扱説明書・バッテリーの取扱説明書に従って、自己責任のもとで行う
用意するものとしては、工具(スパナ、レンチ等)のほかに、感電を防ぐゴム手袋と保護メガネが挙げられている。必要に応じてサンドペーパーやワイヤーブラシも挙がっている。
ガスの話は、ヤマハの取扱説明書にも別の言い方で出てくる。バッテリーは引火性ガス(水素ガス)を発生するので、扱いを誤ると爆発してケガをすることがある、という書き方だ。火気を近づけないこと、ショートやスパークをさせないこと、補充電は風通しのよいところで行うことが並んでいる。バッテリー液が希硫酸であることと、皮膚・目・衣服に付いたときの手当ても同じページにある。
手順そのものは、自分の車種の取扱説明書に載っている
端子の順番は共通でも、そこへ手が届くまでの道のりは車種ごとに違う。MTN250の取扱説明書は、取り外しの手順を次の並びで書いている。
- ライダーシートを取り外す
- バッテリーバンドを外す
- マイナス側のリード線を外し、次にプラス側のリード線を外す
- バッテリーを取り外す
取り付けは逆の手順で、バッテリーバンドは突起部が上側になるように付けるという注意も添えられている。つまり、順番の話に入る前に「シートの外し方」と「バンドの外し方」を知っている必要がある。ここが車種で変わる部分なので、ネット上の手順記事より先に、手元の取扱説明書のバッテリーのページを開いたほうが早い。
なお、同じ取扱説明書は点検整備の章の冒頭で、安全のため、自分の知識と技量に合う範囲内で点検・整備を行うようにと書いている。難しいと思われる内容はヤマハ販売店に依頼してほしい、という案内だ。手順が読めることと、自分の手でやれることは別だという線が、ここに引かれている。
電装の不調が先にあって、原因がバッテリーなのかどうかが決まっていない段階なら、交換を決める前に切り分けをしておきたい。セルの動き方から見ていく手順は「バイクのセルが回らない・カチカチ鳴る|その場で確かめる順番とNG行動」に、セルは回るのに始動しない場合は「バイクのエンジンがかからない|セルは回るのに始動しないとき確かめる順番」にまとめてある。
買う前に照らし合わせること
ジーエス・ユアサの交換手順のページは、新しいバッテリーを取り付ける前に、新旧を比べて次が同等かを確認するよう書いている。
- 型式名
- 容量(Ah)
- 寸法
- 端子の位置(プラス/マイナスの位置も)
- 端子の形状
同ページは、これらが異なると取り付けや使用ができないだけでなく、バッテリーの爆発・車両の損傷・大怪我の原因になることがあると書いている。カタログやホームページの要項表・互換表も併せて確認するように案内している。
ヤマハの取扱説明書も、交換するときは必ず同型式のバッテリーを使うようにと書いている。「とりあえず入る大きさのもの」で済ませられる話ではない、ということだ。
端子の形もひとつではない。ジーエス・ユアサのVRLAのページは、取り外しの説明を端子の形で二つに分けている。片方が「ファストン端子の場合」で、型式として GT4B-5・YT4B-BS・YTR4A-BS が挙がっている。こちらは車両側のカプラごと外す、という書き方だ。付けるときも、車両側のカプラにしっかり取り付けるようにと書かれている。もう片方が、それ以外の端子の場合で、マイナス側から外す並びはこちらに書かれている。ただし同ページの取付時の注意は、「上記取り外しや取り付け時」という言い方で取り外しと取り付けをまとめて指したうえで、プラスとマイナスの順番は絶対に間違えないように、と書いている。この「上記」が指す範囲には、ファストン端子の説明も入っている。だから、ファストン端子なら順番を気にしなくてよい、とは読めない──ここは書き手の読みだが、安全に振れる側の読みでもある。自分のバッテリーがこれに当たるなら、外す手順からして違ってくる。
VRLA(制御弁式)と開放式で、やることが変わる
ジーエス・ユアサは、バッテリーのタイプによって交換方法が異なるとして、VRLAと開放式でページを分けている。手順を読む前に、自分のバッテリーがどちらかを確かめる作りになっている。
呼び方が資料でそろっていない点は、先に書いておきたい。ジーエス・ユアサの開放式のページは、もう一方を「VRLA(制御弁式)」と書いている。ヤマハの取扱説明書のほうは「密閉式」という語を使っていて、この車のバッテリーは密閉式であること、液量の点検と補水は必要ないことが書いてある。一方、ジーエス・ユアサのVRLAのページには、補水について書かれた箇所を見つけられなかった。この二つが同じタイプを指しているというのは書き手の理解であって、今回読んだ4本の中にそう書いた場所はない。自分のバッテリーがどちらの説明に当たるかは、本体の表示と取扱説明書で確かめてほしい。
開放式のページには、VRLAのページには出てこない作業が並んでいる。排気チューブ(排気パイプ)の扱いだ。
取り外し側の話は短い。チューブが同梱されていない機種については、古いバッテリーからそのチューブを取り外す、とだけ書かれている。
取り付け側には前提が付く。ビニールチューブが添えられている製品の話だ、という前提だ。同ページはこれを2つの文で書いている。並びを変えずに行へ割ると、こうなる。
- まず長さを合わせる。外した側のチューブと同じ長さに切る
- 次に向きを決める。スリットのある側か、通気管(わずかな針穴)のある側を、差し込む側にする
- 差し込む先は、排気エルボ、または排気L型パイプ。根元まで、確実に
- 差し込んでいるあいだ、チューブが折れ曲がった状態にならないように気をつける
同ページは、この取り付けが不十分だと引火爆発の原因になるとしている。車体の腐食についても、オートバイの傾きなどで電解液がチューブ側へ出ることがあるため、取り付けが不十分だと原因になると書いている。
電解液と空の容器の処理は、VRLAの側にもある。VRLAのページは、専用の電解液容器の中身を残さず全部 注入すること、空になった容器は残液が無いことを確かめ、多量の水でよく洗ったうえで条例に従って廃棄することを書いている。容器に残った電解液をそのまま捨てることについては、危険であるばかりでなく法律で禁止されている、と書いている。これは開放式のページにも、同じ一文で載っている。
開放式のページにあって、VRLAのページに出てこないのは「中和」のほうだ。開放式のページは、残った電解液(希硫酸)は中和してから捨てる、容器は中和・洗浄のうえ条例に従って廃棄すると書いている。どちらのページも、この処理は保護めがねとゴム手袋を必ず着用して行うようにと書いている。
ヤマハのMTN250のように密閉式が付いている車種では、取扱説明書に液量点検と補水は必要ないと書かれている。補充電には密閉式バッテリー専用の充電器を使うこと、くわしくはヤマハ販売店に相談することが添えられている。長期間乗らないときについては、3か月ごとに補充電するようにとある。
付け終わったあとの確認
ジーエス・ユアサのページは、取り付けが終わったあとのエンジン始動についても書いている。始動操作は5秒以内にとどめ、1回でかからないときは10秒くらい止めてから、もう一度始動操作を行う。これを数回くり返してもかからないときは、バッテリーや始動回路を点検するという流れだ。キックが付いているバイクでは、最初の始動はキックスタートを薦めている。
取り付けが振動で動かないようにしっかり固定することも、同ページの注意に入っている。固定が不十分だと、転倒や液漏れ、バッテリーの破損の原因になるとしている。
かかったあとに、時計のような表示が初期状態に戻っていることがある。カワサキのFAQが書いている、リセットされる機能を設定し直す作業はここだ。
外した古いバッテリーの行き先
使い終わったバッテリーは、家庭のごみと一緒に出すものではない。ジーエス・ユアサのVRLAのページは、使用済みのバッテリーはリサイクルされるとして、購入店に申し付けるよう案内している。放置したり一般のごみと一緒に捨てたりしないこと、子どもが触れる場所に保管しないことも書かれている。
新しいバッテリーを通販で買うと、ここの行き先が決まらないまま古いものが手元に残る。買う先を決める段階で、引き取りをどうするかまで含めて考えておきたい。
自分でやらない、という選び方
ここまで読んで手が止まったなら、それは判断材料が増えたということだ。資料の側も、店に任せる道を閉じてはいない。
- カワサキのFAQは、逆につないだりフレームに接触させたりすることを危険だとしたうえで、心配な場合はカワサキ正規取扱店での交換を勧めている
- ヤマハの取扱説明書は、バッテリー側に異常が見つかったときの持ち込み先として、ヤマハ販売店を挙げている。点検と整備はそこで受けてほしい、という書き方だ。補充電に使う充電器についても、同じ相談先を案内している
- ジーエス・ユアサは、交換は必ず車両の取扱説明書・バッテリーの取扱説明書に従い、自己責任のもとで行うものだと、手順の冒頭に書いている
日常の点検をどこまで自分でやるかの線引きについては「バイクメンテナンス、初心者はどのくらいの頻度でやるべき?点検項目・費用を完全ガイド」も合わせて読んでもらえると、判断の材料になるはずだ。
まとめ
- 外すのはマイナスから、付けるのはプラスから。カワサキのFAQ、ヤマハの取扱説明書、ジーエス・ユアサのページが同じ向きで書いている
- ファストン端子のバッテリーは、外し方が変わる(車両側のカプラごと外す)。自分の端子がどちらかを先に見る。順番の注意は、そちらにも掛けて書かれている
- エンジンを止めてキーを抜く。走ったあとなら30分以上 休ませてから始める
- シートやバンドの外し方は車種で違う。自分の取扱説明書のバッテリーのページを先に開く
- 買う前に、型式名・容量・寸法・端子の位置と形状を照らし合わせる
- VRLA(制御弁式)か開放式かで作業が変わる。排気チューブと「中和」は開放式の側にあり、電解液と空容器の処理はどちらの側にもある
- 古いバッテリーは購入店へ。一般のごみに出さない
- 迷ったら店に持ち込む。カワサキのFAQもヤマハの取扱説明書も、その道を書いている
参考にした情報源
- カワサキモータースジャパン FAQ「バッテリーが上がってしまった場合、自分で交換してもいいですか。」 ── ケーブルを外す順・付ける順、正規取扱店に任せる選択肢
- ヤマハ発動機 MTN250 取扱説明書(PDF) ── 車種ごとの取り外し手順、密閉式の扱い、販売店への依頼
- ジーエス・ユアサ バッテリー「バイク用バッテリーの交換方法(VRLA)」 ── 制御弁式の手順、準備するもの、取付後の確認
- ジーエス・ユアサ バッテリー「バイク用バッテリーの交換方法(開放式)」 ── 排気チューブと電解液の扱い


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