新車を納車してもらった帰り道、アクセルを開けていいのか迷う ── これが「ならし運転」の話です。ネットを見ると「もう不要」「いや必要」と割れていますが、メーカーの公式な案内を読むかぎり、3社ともやるものとして案内しています。
ただし、中身が同じではありません。先に結論を3つ。
- 3社とも、するものとして案内しています。カワサキとヤマハは「ならし運転をしてください」「行ってください」と命令の形で書いています。ホンダだけは入り方が違って、効果のほうから書き、500kmまでは控えめな運転を、と続けます。なお、今回 読んだ6本の中に「不要」と書いているものは有りませんでした。
- 「回転数を見る会社」と「操作を見る会社」に分かれてはいませんでした。カワサキとヤマハは、回転数の制限と、避ける操作を、どちらも書いています。ホンダ(確かめた2車種のQ&A)だけは操作のほうで、回転数の指定が有りませんでした。
- 違うのは、終わりの区切り方。ホンダのQ&Aは500km、カワサキのFAQは最初の1000km、ヤマハSR400の取扱説明書は、最初の点検(1か月目か、1000km走ったとき)までです。
出典は、ホンダのQ&Aが2車種、カワサキのFAQとならし運転の項、ヤマハのバイクブログと取扱説明書の、合わせて6本です。末尾にリンクを置いてあります。運営者の体験記ではなく、公式の文面を読み比べたものです。出典に書かれていない数字は書いていません。
ホンダ(確かめた2車種) ── 距離は500km、制限するのは「操作」
ホンダは車種ごとのQ&Aページで答えています。Rebel 250 シリーズのものを開くと、こう書かれています。
まず、適切に行えば、その後の性能をより良い状態に保てる、という効果が示されています。そのうえで距離の線が500km。そこまでは控えめな運転をしてください、と書かれています。避けるものとして名前が挙がっているのは4つで、急なシフトダウン、急ブレーキ、それに急加速と急発進です。
読みどころは、回転数の指定が無いことだと思います。避けるように言われているのは「急」が付く操作のほう。メーターとにらめっこするのではなく、操作を雑にしないという組み立てになっています。
同じ文面かどうかが気になったので、別の車種も開いてみました。CB1000 HORNET シリーズのQ&Aも、距離も操作の並びも同じでした。ただし私が確かめたのは2車種です。ホンダの全車がこうだ、とまでは言えません。自分の車種のページを開いてください。
もうひとつ、ホンダのページで親切だと思ったのは、型式と年式が先に明記されていることです。Rebel 250のページなら型式8BK-MC49、年式2023年から。フレームナンバーの範囲まで添えられています。自分の車がその範囲かどうかを、読む前に確かめられる作りです(なぜそうしているかは書かれていません。ここから先は書き手の読み取りになります)。
カワサキ ── 最初の1000km、回転数も操作も
カワサキは、私が辿れた範囲で2か所に書いていました。ひとつはFAQ、もうひとつはアフターサービスの「ならし運転」の項です。この2つ目に気づくまで、私はFAQだけを読んでいました。
FAQは、なぜ必要なのかという質問の形で答えています。効果として並んでいるのは、エンジン内部の部品が適切に馴染むこと。初期段階の部品摩耗が抑えられること。そして、車の性能が保たれ、寿命が延びることです。そのうえで距離の線が最初の1000km。そこまでは、下表のエンジン回転数以下で走る、という指示です。
ただし、その回転数の表はこのFAQのページに画像で載っていて、こちらがテキストとして読み取れませんでした。読めていない数字を書くわけにはいきません。この記事では具体的な回転数を書きません。同じページは、ならし運転の方法が機種ごとに異なるので車両の取扱説明書で確認するように、とも続けています。自分の機種の値は、このFAQの表と、自分の取扱説明書で確かめてください。
そして、FAQの「ならし運転」という語からリンクされている先 ── アフターサービスのページに、やりかたが4つ、文章で書かれています。
- 距離の目安は取扱説明書に書かれた走行距離。その間、エンジン回転数は指定の範囲内に抑えて走る
- エンジンが温まるまでは無理に回さず、徐々に暖める
- 高速道路や、長い時間の全開走行はしない
- 急発進と急加速を控える
つまりカワサキは、回転数だけでなく、操作と暖機も書いています。ならし運転の話の中で「高速道路や長時間の全開走行」に触れているのは、今回 読んだ6本のうちここだけでした。同じページは冒頭で、ならし運転を行うことがとても大切だ、とも書いています。
ヤマハ ── 「ならし運転を行ってください」、方法は車種ごと
ヤマハはバイクブログのQ&Aで、3つ答えています。新車の使い始めには、ならし運転を行ってください。そのうえで、やりかたは車種によって違うので、詳しくは取扱説明書で確かめてほしい、と続きます ── 短い回答ですが、「必要ですか」という問いに「行ってください」と正面から答えています。
では実際の取扱説明書には何が書いてあるのか。例としてSR400の取扱説明書のならし運転の項を開くと、こうなっています。
- 終わりの区切りが点検になっています。初回の1か月目、あるいは1000km走行時に入る点検 ── そこまでが、ならし運転の期間です。
- エンジン回転数は4000 r/min 以下で走行するように、とされています。
- やらないこととして挙がっているのは、不要な空ぶかしと、急加速、急減速です。
- 締めの一文は、車の寿命を延ばす効果があるというものです。
ここでも、回転数と操作の両方が出てきます。カワサキと同じ形です。違うのは期間の決め方で、「1か月目または1000km走行時の点検まで」。距離だけでも、月数だけでもありません。
なお、4000 r/minという数字はSR400のものです。他の車種に当てはめるものではありません。
3社を並べて分かること
読み比べて はっきりしたのは、「回転数を見る会社」と「操作を見る会社」に分かれてはいなかったことです。
- カワサキ ── 回転数(表の値以下)+操作(急発進・急加速を控える、全開走行はしない)+暖機。
- ヤマハ(SR400の取扱説明書) ── 回転数(4000 r/min以下)+操作(不要な空ぶかし・急加速・急減速をしない)。
- ホンダ(確かめた2車種のQ&A) ── 操作(「急」の付く4つを避けて、控えめに)。回転数の指定はありませんでした。
違いが出るのは、終わりの区切り方のほうです。500km、最初の1000km、そして最初の点検(1か月目か1000km走行時)まで。今回 読んだ6本の中に、「ならしは○○km」と一つに決められる書き方はありませんでした。ネットの記事が割れて見えるのは、ここが関係しているのかもしれません(これは書き手の推測です)。
もうひとつ。同じメーカーでも、どのページを読むかで見えるものが変わります。カワサキのFAQは「最初の1000km」と距離を書いていますが、アフターサービスのならし運転の項のほうは、距離の数字を出さずに取扱説明書の走行距離を目安にするよう書いています。どちらもカワサキの公式の文面です。
取扱説明書で確かめるように書いているのは、カワサキのFAQとヤマハのQ&Aです。どちらも、方法は機種・車種によって違うと断ったうえで、取説へ送っています。カワサキのアフターサービスの項は書き方が違って、走行距離の目安のほうを取説に預けています(「取扱説明書記載の走行距離を参考に」)。読んだ2車種のホンダのQ&Aページには、取扱説明書への案内がありませんでした。
そのホンダのページのうち、CB1000 HORNET シリーズのほうには「掲載モデル共通」と添えられています。ただしこれは、そのページに載っているモデルの間で共通、と読むのが素直なところです。ホンダの全車種でこの回答が共通だ、とまでは書かれていません。
「ならしは意味がない」という話をどう扱うか
ここは、はっきりさせておきます。
メーカーの公式な文面の中に、「ならし運転は不要」と書いているものは、今回 読んだ6本には有りませんでした。読んだのは、ホンダのQ&Aが2車種、カワサキのFAQ、カワサキのアフターサービスのならし運転の項、ヤマハのQ&A、そしてヤマハの取扱説明書の6本です。むしろ3社とも、性能や寿命に関わる話として書いています。
もちろん、私が読んだ範囲がメーカーの全部ではありません。ただ、「不要」と言っている一次資料を見つけられなかった、というのが実際のところです。判断の材料として、そのまま置いておきます。
ならしが終わったら、やることがある
区切りの決め方は、資料によって違いました。
SR400の取扱説明書は、ならし運転を続ける期間を、1か月目か1000km走行時に受ける最初の点検までとしています。ならし運転の終わりを点検に置いているのは、読んだ6本のうちこの1本だけです。ホンダのQ&AとカワサキのFAQは距離で区切っていて、カワサキのならし運転の項は取扱説明書の走行距離を目安にするよう書いています。
この時期は、エンジンオイルの初回交換とも重なります。SR400の取扱説明書では、エンジンオイルの初回交換時期が「1か月点検時または1000km時」とされていて、ならし運転の区切りと同じ位置に置かれています(これもSR400の値です)。点検の頻度と費用の全体像はバイクメンテナンス、初心者はどのくらいの頻度でやるべき?点検項目・費用を完全ガイドにまとめてあります。
それと、納車直後の話でもうひとつ。発進でエンストする原因についてはバイクの発進でエンストする原因は?平地と坂道で違う見直し点と、動き出すレバー位置の覚え方に書きました。
まとめ
- 今回 読んだのは、メーカー公式の6本です(ホンダのQ&Aが2車種/カワサキのFAQとアフターサービスのならし運転の項/ヤマハのQ&Aと取扱説明書)。以下は、その6本の中での話です。
- ホンダのQ&A(確かめた2車種)── 500kmまで、控えめな運転をしてください、と書かれています。避けるのは、急なシフトダウン・急ブレーキ・急加速・急発進の4つ。回転数の指定はありません。
- カワサキのFAQ ── 最初の1000kmまで、表に示された回転数以下。表の数字は読み取れなかったので、この記事には書いていません。アフターサービスのならし運転の項のほうは距離の数字を出さず、取扱説明書の走行距離を目安にするよう書いたうえで、暖機・全開走行はしない・急発進や急加速を控える、を挙げています。
- ヤマハのQ&A ──「新車の使い始めには、ならし運転を行ってください。」方法は車種により異なる。SR400の取扱説明書では、最初の点検(1か月目か1000km走行時)までのあいだ、4000 r/min以下。
- 取扱説明書で確かめるように書いているのは、カワサキのFAQとヤマハのQ&A。読んだ2車種のホンダのQ&Aページに、その案内はありません。
- この6本の中に、「不要」と書いているものは見つかりませんでした。
参考にした情報源
- 【Rebel 250 シリーズ】慣らし運転は必要ですか(Honda Q&A)
- 【CB1000 HORNET シリーズ】慣らし運転は必要ですか(Honda Q&A)
- モーターサイクルのならし運転は、なぜ必要なのですか。(カワサキモータースジャパン FAQ)
- 点検整備 ── ならし運転(カワサキモータースジャパン アフターサービス/上のFAQからリンクされている先)
- 新車でバイクを購入しました。ならし運転は必要ですか?(ヤマハ発動機)
- SR400 取扱説明書(ヤマハ発動機・PDF/ならし運転の項)


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