台風や大雨のあと、駐車場のバイクがシートの高さまで水に浸かっていた。水は引いたけれど、エンジンはかけていいのか。直すのか、売るのか、保険は使えるのか。そう迷っている人に向けた記事だ。
先に答えを書くと、順番は「エンジンをかけない → 写真を撮る → 保険を確かめる → 修理の見積もりと売値を比べる」だ。国土交通省は、水に浸った車両は見た目に問題がなくても感電や車両火災のおそれがあるとして、自分でエンジンをかけないよう呼びかけている。売るか直すかを決めるのは、そのあとでいい。
この記事では、国土交通省とJAFの注意喚起、保険会社(アクサ損害保険)の公式ページ、買取のKATIXのよくある質問を読んで、水没したバイクを前にしたときの順番を確かめた。多くの公式の説明は「車両」「自動車」向けに書かれているので、バイクに当てはめるところは筆者の読みとして分けて書く。
まず、エンジンをかけない・キーを回さない
国土交通省の「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」は、水に浸った車両について次の3つを挙げている。
- 自分でエンジンをかけない
- 使いたいときは、買った販売店か最寄りの整備工場に相談する
- 使うまでのあいだは発火のおそれがあるので、バッテリーのマイナス側のターミナルを外し、外した端子がバッテリーに触れないようテープで覆うなどする
理由として同じページは、見た目に問題がなさそうでも、感電事故や、電気系統のショートなどによる車両火災が起きるおそれがあると書いている。
JAFのクルマ何でも質問箱も同じ向きだ。車内まで水が入った車は、水が引くまでそのままにして、ロードサービスか販売店に知らせる。引いたあとでもエンジンを始動すれば、壊したり感電したりするおそれがあるので避ける。駐車中に川があふれて沈んだ車にも同じことが言える、という説明だ。
海水をかぶった場合について、同じJAFのページはさらに注意している。海水は電気を通しやすく、キーを抜いていてもバッテリーから直接電気が流れてショートすることがあり、水が引いたあとも腐食が進んで自然に発火することがある、という。高潮で浸かったときも、バッテリーを自分で外す・エンジンをかけるといったことはせず、JAFや販売店、整備工場に任せるよう書いている。
ここからは筆者の読み方です。どちらのページも自動車向けの書き方だが、バイクもバッテリーと電気系統を積んでいる点は同じだ。キーを回してメーターを点けてみる、セルを押してみる、キックで試す、といった「ちょっとだけ確かめる」も含めて、相談するまでは何もしないのがいちばん安全だと考える。バッテリーの端子を外す作業に自信がなければ、無理に触らなくていい。エンジンがかからないときに一般に確かめる順番はエンジンがかからないときの記事にまとめたが、水没したバイクはその前に専門家に見てもらう側だ。
動かす前に、写真を撮っておく
保険を使うかもしれないなら、片付けや移動の前に写真を残しておきたい。アクサ損害保険のよくある質問(自動車保険・バイク保険共通)は、すぐ修理に出さない場合は損害の写真を撮っておくことをすすめ、撮り方として次の3つを挙げている。
- ナンバープレートが分かる全体の写真
- 傷んだところを中心に、全体が分かるよう3〜5方向から
- 車検証(自動車検査証記録事項)も一緒に
ここからは筆者の読み方です。水没の場合は「傷んだところ」が外から見えにくい。水がどの高さまで来ていたか(泥の線、シートやメーター、マフラーの出口の位置)が分かる写真を、水が引いた直後に撮っておくと、保険会社にも修理工場にも、あとで買取店に伝えるときにも使える。車検証が車体に積んであって濡れたときは、書類の再発行の窓口を書類をなくしたバイクの記事にまとめている。
保険で補償されるかを確かめる
バイク保険に「車両」の補償が付いているか
最初に確かめたいのは、自分の契約に車両の補償があるかどうかだ。たとえばアクサ損害保険のバイクの車両保険のページは、アクサのダイレクトバイク保険には車両に関する補償は含まれていない、と書いている。自分のバイクの損害に備えたい人向けには、別の保険(SBI日本少額短期保険の「みんなのバイク保険」)に上乗せで入る形をすすめている。
ここからは筆者の読み方です。バイク保険(任意保険)に入っていても、自分のバイクの損害が補償されるとは限らない。証券やマイページで、車両の補償があるか、水害が入っているかを先に見ておきたい。
水災の補償があっても、条件がある
同じページで「みんなのバイク保険」の水災補償を読むと、条件がはっきり書かれている。
- 水災で全損になったときに保険金が出る。全損とは、修理できない場合か、修理費が保険金額の80%を超える場合
- 大雨の洪水で水没した、走行中のゲリラ豪雨で道路が冠水して損害を受けた、といった例は、水災補償を付けていれば対象
- ただし、すでに冠水していた道路に自分から突っ込んで水没した場合などは対象外
- 地震・噴火やそれらによる津波での損害は、水災補償でも対象外
- 排気量が125cc以下のバイクは、この保険に入れない
ここからは筆者の読み方です。これは1社の1商品の条件で、ほかの保険会社・商品では違うことがある。ただ「水没=必ず保険が出る」わけではないこと、全損にあたるかどうかで話が変わることは、覚えておいていい。自分の契約でどうなるかは、契約している保険会社に聞くのが確実だ。
売る・捨てる前に、保険会社へ連絡する
ここからは筆者の考えです。車両の補償があるなら、買取店に引き渡したり廃車にしたりする前に、保険会社へ連絡して手続きの順番を聞いておきたい。手放したあとでは、損害を確かめてもらう手段が限られるおそれがある。保険が使えないと分かってから、売るか直すかを考えても遅くはない。修理か売却かで迷ったときの考え方は事故で壊れたバイクを直すか売るかの記事でも扱っている。
運ぶとき:ロードサービスに頼む
エンジンをかけられない以上、販売店や整備工場へは運んでもらうことになる。
JAFのバイクのロードサービスのページは、大型二輪から原付までの救援・搬送に対応し、自然災害に起因した事故や故障も、自動車保険では対象外のロードサービスとして対応していると書いている。けん引・搬送は会員なら20kmまで無料だ。先に挙げたJAFのQ&Aは、浸水した車両も水が引いたあとに自宅や販売店・整備工場など任意の場所までけん引できるとし、会員でない場合のけん引は1kmごとに830円かかる、と書いている(2025年7月現在の表示)。
ZuttoRide Clubのロードサービスプランは、故障・事故で自走できないとき、原則として加入バイクショップか自宅まで運ぶサービスだ。プランは無料で運ぶ距離で分かれていて、50km・100km・無制限などがある。ただし、台風や大雨で水没したバイクが搬送の対象になるかは、公式ページには書かれていない。加入している人は、呼ぶ前に緊急の窓口で確かめてほしい。
任意保険に付いているロードサービス、JAF、ZuttoRide Clubの違いはロードサービスと盗難保険の比べ方の記事にまとめている。
直すか、売るか
修理の見積もりを取る
国土交通省のページが「使いたい場合は販売店か整備工場に相談」と書いているとおり、まずは見てもらって、直せるか・いくらかかるかを聞く。ここからは筆者の読み方です。水がどこまで来たかで、傷むところは変わる。見積もりが出たら、その金額と「今のまま売ったらいくらか」を並べて比べると決めやすい。
売値を聞く:KATIXの場合
KATIXは、自分で撮った写真を複数の買取業者が見て査定し、いちばん高い業者を案内する仕組みだ。よくある質問を読むと、水没したバイクについての問答は無い。書かれているのは次のようなことだ。
- 写真を送ったあとは、写真と走行距離・車台番号・状態などをもとに、査定を始められるかを審査する
- バッテリーが上がった不動車にも値段はつき、実働車よりは下がるが、値段がついた売却の実績は多い
- 引き取りのときは再査定ではなく、写真と実車に違いがないかを確かめる。申告に無いものが見つかれば、キャンセル扱い(キャンセル料はかからない)
- 現地でキャンセルになる主な原因には、写真で確認できない錆、フレームの錆、エンジンの異音・不調などが入っている
- 査定額に納得できなければ、売らなくていい
ここからは筆者の読み方です。水没したバイクで値段がつくかどうかは、KATIXの説明からは言い切れない。審査と査定を受けてみるまで分からない。申し込むなら、水没したこと、水が来た高さ、エンジンをかけていないことを、状態の説明にそのまま書いておくのがいい。隠して出しても、引き取りの日に見つかればキャンセルになるだけで、時間を失う。
KATIXは引上げにかかる料金も業者の負担だとしている。自分で運べない水没車を、値段を聞く段階で動かさずに済むのは、この順番では助かる点だ。申し込む前に用意しておくものは査定を申し込む前の準備の記事、動かないバイクの値段の決まり方はエンジンがかからないバイクを売る記事、KATIXの仕組みはKATIXの記事にある。
値段がつかなかったら
修理も割に合わず、値段もつかなかったときは、廃車を考える。手続きはバイクの廃車手続きの記事にまとめている。車両の補償がある場合は、ここでも先に保険会社へ連絡しておきたい。
次の台風に向けて、備えを見直す
水没のあとで困るのは「運ぶ手段」と「自分のバイクの補償」だ。ここからは筆者の考えです。落ち着いたら、次の3つを確かめておくといい。
- 車両の補償があるか、水災が入っているか。アクサのように、バイク保険そのものに車両の補償が無い例もある。
- ロードサービスで、どこまで・何に対応してもらえるか。JAFは自然災害に起因した故障にも対応すると書いている。ほかのサービスは、水没が対象かを問い合わせておく。
- 盗難の補償は、水没とは別物。ZuttoRide Clubの盗難保険プランは、駐車中の盗難やカギ穴へのいたずらに備えるもので、車両盗難は最大300万円まで補償する。水没の補償ではない。
ZuttoRide Clubには、ロードサービスだけのプラン、盗難保険のプラン、その2つを合わせたフルサポートプランがある。任意保険のロードサービスの距離や運び先に不安があるなら、プランと見積もりを見ておいてもいい。

まとめ:水没したバイクの前でやる順番
- エンジンをかけない(キーを回して試すのも控える)。国土交通省とJAFは、感電や車両火災のおそれを理由に、自分でかけないよう呼びかけている。
- 写真を撮る。ナンバーが分かる全体、3〜5方向、水が来た高さ、車検証。
- 保険を確かめる。車両の補償があるか、水災が入っているか。アクサのみんなのバイク保険の水災補償は全損(修理費が保険金額の80%超など)が条件で、冠水した道に自分から入った場合は対象外。
- 運んでもらう。JAFは会員なら20kmまで無料でけん引。ほかのロードサービスは水没が対象かを確かめる。
- 修理の見積もりと売値を比べる。売るなら、水没したことを状態の説明に書いて査定を受ける。



