亡くなった父や家族のバイクが、車庫に残っている。名義は亡くなった人のまま。これを売るには、まず「相続」の手続きを通る必要がある。
先に答えを書くと、原付(125cc以下)は市区町村の窓口で、相続人の名義に変えるか、相続人として廃車の手続きをすれば、売る準備が整う。どちらも、亡くなったことと相続人であることが分かる戸籍などを求められる(省ける市もある)。125ccを超えるバイクは運輸支局等の手続きで、要る書類は相続の状況によって違うので、運輸支局に問い合わせるよう運輸局が案内している。そしてもう1つ、借金などがあって相続放棄を考えているなら、売る前に立ち止まってほしい。民法には、相続人が相続財産を処分すると(保存行為などは除く)単純承認をしたとみなす決まりがある。
この記事では、この流れを関東運輸局・東北運輸局の案内、台東区・習志野市・藤沢市・高槻市・府中市・姫路市の案内、民法の条文、買取店2社(KATIX・バイクワン)のよくある質問で確かめた。内容は2026年9月25日に各ページで見たもので、変わることがある。自分の場合の書類は、ナンバーを出した市区町村か、管轄の運輸支局等で確かめてほしい。名義人が生きている家族名義のバイクは親名義・家族名義のバイクを売る記事で扱っている。
最初に見る:本当に「亡くなった人の名義」か
相続の手続きになるかどうかは、書類の所有者の欄で決まる。関東運輸局の自動車の相続による手続きのページは、所有者は車検証の「所有者の氏名又は名称」で確かめるよう書き、所有者が第三者のときは相続は発生しないとしている。
東北運輸局のよくある質問も、車検証の所有者欄の人が亡くなった場合は相続(名義変更)の手続きが要ると答えている。そのうえで、所有者欄が自動車会社やクレジット会社などになっているときは、相続の手続きではなく、ふつうの移転登録(名義変更)になるとしている。バイクワンのQ&Aにも、ローンで買うと販売店やローン会社に所有権が付くことがあるとあるので、その場合はローンが残っているバイクを売る記事の話になる。
見る書類は排気量で違う。バイクワンのQ&Aによると、251cc以上は「自動車検査証」、250ccまでは「軽自動車届出済証」、125ccまでは「標識交付証明書」だ。同じQ&Aによると、251cc以上のバイクのうち令和5年1月以降に登録されたものは、車検証が電子化されて所有者が券面に出ない。そのため「検査証閲覧アプリ」か「自動車検査証記録事項」で見るよう書いている。書類が見つからないときは書類をなくしたバイクを売る記事を先に読んでほしい。
売る前に:相続放棄を考えているなら、先に確かめる
ここは手続きより先に書いておきたい。亡くなった人に借金があるなど、相続放棄を考えている場合の話だ。
民法第921条によると、次のどれかに当たると、相続人は単純承認をしたものとみなされる。一つ目(第1号)は、相続財産を全部でも一部でも処分したとき。この号には但し書きがあり、保存行為と、第602条の期間を超えない賃貸は除かれている。二つ目(第2号)は、限定承認も放棄もしないまま、第915条第1項の期間が過ぎたとき。三つ目(第3号)は、限定承認や放棄をしたあとに、相続財産を隠す・ひそかに使う・悪意で財産目録から外す、などをしたとき(この号にも但し書きがある)。
民法第915条第1項によると、承認(単純か限定)か放棄かは、相続人が、自分のために相続が始まったと知った時から三箇月以内にしなければならない。この期間は家庭裁判所が伸ばすことができ、伸ばすのは利害関係人か検察官が請求したときだ(同項の但し書き)。同じ条の第2項は、承認や放棄をする前に、相続人が相続財産を調べてよいとしている。
ここからは筆者の読み方です。バイクを売ることが第921条第1号の「処分」に当たるかどうかを、この記事で決めることはできない。ただ、放棄を少しでも考えているなら、売る・廃車にする・名義を変える、のどれかに手を付ける前に、家庭裁判所や弁護士・司法書士などに相談するのが安全だ。放棄も限定承認もせず、財産も借金もすべて引き継ぐと決めているなら、この心配はいらない。
誰が相続人か:運輸局の案内にある順位
窓口では「相続人であること」を戸籍などで示す。関東運輸局のページは、相続人の順位を次のように載せている。
| 順位 | 相続人(関東運輸局の案内) |
|---|---|
| 第1順位 | 子(亡くなっている場合は代襲) |
| 第2順位 | 父母(亡くなっている場合は祖父母) |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(亡くなっている場合は代襲) |
| いつでも | 配偶者はどの場合も相続人 |
同じページは、順位は当てはまる人がいないときに次へ移ること、養子縁組の養親・養子も順位に従って相続人になることも注記している。さらに、相続人に未成年者がいて、親権を使うことが利益相反になるときは特別代理人の選任が要るとしている(選任は家庭裁判所に確認、とある)。
原付(125cc以下):市区町村の窓口でできること
原付の名義変更や廃車の窓口は、ナンバーを出した市区町村だ。台東区の案内は、亡くなった人が車両の所有者なら、所有権は相続の対象になり、法定相続人に名義を変える必要があるとしている。使わずに処分するなら廃車の手続きが要る、とも書いている。
読んだ市区町村の案内を並べると、売るまでの道は次の3つに分けられる。
| やり方 | どんなときか | 市区町村の案内で求められる主なもの |
|---|---|---|
| ① 相続人の名義に変える | いったん相続人のものにしてから売る | 死亡と相続関係が分かる戸籍など、相続人の本人確認書類、標識交付証明書など |
| ② 相続人から第三者へ譲る | 相続人でない人(買う人)の名義にする | ①の戸籍などに加えて、相続人からの譲渡証明書 |
| ③ 相続人が廃車にする | ナンバーを返してから売る・処分する | ナンバープレート、戸籍など、相続人の本人確認書類 |
表は、下で挙げる各市区町村の案内から筆者がまとめたものだ。細かい書類は市区町村ごとに違う。
習志野市:3つの手続きごとに書類を分けて載せている
習志野市の案内は、所有者が亡くなったときの原付の手続きを「廃車をする」「相続人の名義へ変更する」「相続人からの譲渡による登録」に分けている。
- 廃車:ナンバープレート、登録のときに市長が出した標識交付証明書(原本)、届出人(相続人)の身分証明書、所有者が亡くなったことの分かる住民票か戸籍(除籍)の写し、届出人が相続人だと確かめられる戸籍謄本の写し
- 相続人の名義へ変更:ナンバープレート、標識交付証明書(原本)、相続人の身分証明書、死亡の分かる住民票か戸籍(除籍)の写し、相続人だと確かめられる戸籍謄本の写し。遺産分割協議書があるときは、その写しも付ける。亡くなった人が市に住民登録していた場合は、死亡の分かる書類は要らない。亡くなった人も相続人も市内に住民登録があれば、同じナンバーのまま登録でき、ナンバーの返却は要らない
- 相続人からの譲渡による登録:ナンバープレート、標識交付証明書(原本)、相続人からの譲渡証明書、届出人の身分証明書、死亡の分かる住民票か戸籍(除籍)の写し(亡くなった人が市に住民登録していた場合は不要)、譲る人が相続人だと確かめられる戸籍謄本の写し。亡くなった人も新しい所有者も市内に住民登録があれば、同じナンバーのまま登録でき、返却は要らない
同じ市は、どの手続きも代理人が申し込めるが、相続人からの委任状と身分証明書が要るとしている。
藤沢市:もらう人が相続人かどうかで、譲渡証明書の要否が変わる
藤沢市の名義変更の案内は、前の所有者が亡くなっている場合を2つに分けている。新しい所有者が相続人なら、所有者の死亡と相続関係を証明できる書面(戸籍謄本など・コピー可)を出し、譲渡証明書は要らない。新しい所有者が相続人でないなら、同じ書面に加えて、相続人からの譲渡証明書が要る。
台東区も、相続人に名義を変えるときは「法定相続人であることが分かる書類」と区の様式の「相続人申立書」、相続人以外の人に名義を変えるときは、さらに譲渡証明書を求めている。廃車は、法定相続人が手続きするなら本人確認書類・ナンバープレート・法定相続人であることが分かる書類で、相続人以外が手続きするなら委任状も要る、という表だ。
戸籍を省ける場合もある(高槻市・府中市・姫路市)
戸籍の扱いは市区町村で差がある。
- 高槻市:原付の登録・廃車の案内で、相続人への名義変更と相続人による廃車の両方に、相続関係を証する戸籍など(写し可)を挙げている。そのうえで、市に住民登録している同じ世帯の家族が相続するときは、この戸籍などを省けるとしている。相続人による名義変更は本庁だけで受け付け、支所ではできない、とも書いている。
- 府中市:原付の廃車の案内で、相続人が手続きするときは、所有者の死亡と相続人であることが確かめられる戸籍が要るとしている。ただし、市民税課から届く、名義変更や廃車の手続きを案内する文書を持って、その宛名に書かれた相続人が来るなら、戸籍は要らない。
- 姫路市:よくある質問で、まだ乗るなら名義変更、乗らないなら廃車が要るとし、窓口に来るのは相続人か、相続人から委任を受けた人(委任状が要る)としている。市が所有者の死亡を確かめた場合は、主税課が名義人の変更手続きについての通知書を送るので、それを持って来るよう書いている。通知書が無いときや本籍地が市外のときなど、相続人だと確かめられない場合は戸籍謄本などを見せる必要がある。
ここからは筆者の読み方です。府中市や姫路市のように、市から手続きの通知が届く場合がある。家族が亡くなったあとに市区町村から軽自動車税の書類が届いていたら、捨てずに窓口へ持っていくと、戸籍を集める手間が減るかもしれない。どこまで省けるかは、自分の市区町村に聞いてほしい。
125ccを超えるバイク:運輸支局等に前もって相談する
125ccを超えるバイク(軽二輪・小型二輪)は、市区町村ではなく運輸支局や自動車検査登録事務所の手続きになる。台東区は125cc超の二輪を足立自動車検査登録事務所、習志野市は125ccを超えるバイクを習志野自動車検査登録事務所と、それぞれの窓口を案内している。台東区は、名義変更や廃車に要るものは、それぞれの窓口に確かめるよう書いている。
運輸局の案内も、相談を前提にしている。東北運輸局のよくある質問は、相続の手続きに要る書類は相続の状況などで違うので、車検証の記載を確かめたうえで各運輸支局の登録担当に問い合わせるよう答えている。関東運輸局のページも、相続の手続きはとても複雑なので、分からなければ車検証と自動車検査証記録事項を手元に用意して、使用の本拠の位置を管轄する運輸支局等に事前に相談してほしいとしている。
関東運輸局のページには、単独相続・共同相続・相続と第三者への名義変更を同時にする場合・一時抹消登録などの例が載っている。ただ、これは自動車全般の案内で、バイクの排気量ごとの書類までは書かれていない。この記事では、軽二輪・小型二輪の相続でどの書類が要るかを公式の案内で確かめきれなかったので、書類の一覧は載せない。
ここからは筆者の読み方です。相談の電話では、次の4つを伝えると話が早い。
- 排気量と、手元にある書類(自動車検査証か軽自動車届出済証)
- 所有者が亡くなったこと、相続人が何人いるか
- 誰が引き継ぐか、または相続人から買取店などへ直接譲りたいのか
- 乗らずに廃車(返納)にしたいのか
買取店に申し込むとき:「名義人が亡くなっている」と最初に伝える
買取店の公式ページを見ても、名義人が亡くなっている場合の決まりは見つからなかった。だから申し込みの段階で、事情を先に伝えて、何を用意すればよいかを聞くのがいちばん確実だ。そのうえで、両社のよくある質問から読み取れることを書いておく。
KATIX:引き取りは原則として所有者の立ち会い
KATIXのよくある質問では、所有者の代わりに出品することはできるとしている。ただ、実際の引き取りでは原則として所有者の立ち会いを求めていて、難しい場合は、対応できる人の名義に変えるか、廃車手続きと譲渡証を用意してほしい、と答えている。業者によって違うので問い合わせてほしい、とも書いている。売るときの必要書類としては、車検証(軽自動車届出済証、標識交付証明書)と自賠責の証書、所有者の身分証明書を挙げている。
ここからは筆者の読み方です。所有者が亡くなっていれば、立ち会いも、所有者の身分証明書を出すこともできない。KATIXの答えに当てはめると、先に相続人の名義に変えてから売るか、原付なら相続人として廃車を済ませてから売るか、の2つが考えられる。どちらでよいかは、引き取る業者によって違いうるので、申し込みのときに確かめてほしい。
バイクワン:名義人の事情によっては、支払いが後日振込になる
バイクワンのQ&Aは、代金は原則として引き渡しの日に現金で払うが、名義人の問題や書類の不備などがあれば後日の銀行振込にすることがある、と書いている。売るときには実印・印鑑証明書・住民票は要らないとしつつ、登録の名義が旧姓なら戸籍謄本や住民票などが要る場合もある、としている。名義人が亡くなっている場合の扱いは、Q&Aには見当たらなかった。
どちらに申し込むにしても、「所有者が亡くなっている」「相続人は誰で、何人か」「名義変更・廃車はまだか、済んだか」の3つを最初に伝えておくと、あとで書類が足りずに引き取りが止まることを避けやすい。
KATIXの仕組みはKATIXの記事、売るときの書類全体はバイクを売るときの必要書類の記事にまとめている。
放っておくと:軽自動車税の通知は続く
乗らないまま置いておいても、税金は止まらない。台東区は、軽自動車税は毎年4月1日現在で車両を持っている人にかかり、手続きをしないと正しく課税されない原因になるので、早めに手続きしてほしいとしている。習志野市も、所有者が亡くなっていても、手続きをしなければ課税されると注意している。
売るのが先になりそうなら、せめて名義か廃車の手続きを早めに終えておきたい。4月1日と手続きの日の関係は3月にバイクを手放すときの軽自動車税の記事、廃車の手続き全体はバイクの廃車手続きの記事で扱っている。
まとめ:亡くなった家族のバイクを売る順番
- 所有者を確かめる。書類の所有者が亡くなった本人か。ローン会社などなら相続の手続きではない。251cc以上で券面に出ないときは記録事項などで見る。
- 相続放棄の可能性を確かめる。考えているなら、売る・廃車・名義変更の前に専門家や家庭裁判所に相談する(民法第921条・第915条)。
- 原付は市区町村へ。相続人の名義にする・相続人から譲る・相続人が廃車にする、のどれかで、死亡と相続関係の分かる戸籍などを用意する(市によっては省ける)。
- 125cc超は運輸支局等へ前もって相談。書類は相続の状況で違う。
- 買取店には最初に事情を伝える。立ち会いと所有者の身分証明書の代わりに何が要るかを聞く。


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